高宮静男 西神戸医療センター精神・神経科部長

(上)摂食障害 低年齢化に警鐘

 拒食症などの「摂食障害」になると低栄養状態になり、最悪の場合、死に至ることもある。最近では、低年齢化の傾向も見られ、小中学生を中心に診療にあたっている西神戸医療センター(神戸市西区)の精神・神経科部長の高宮静男さんは、「保護者や学校は、子どもが拒食に向かう兆候を見逃さないでほしい」と警鐘を鳴らす。

病院スタッフらと話をする西神戸医療センターの高宮静男さん(左手前)(神戸市西区の同センターで)=笹井利恵子撮影

 

保護者も大きい負担

 <西神戸医療センターでは1994年から、昨年3月までに24人の小学生が摂食障害で入院した。入院期間は最長約10か月で、平均約4か月だ>

 24人のうち、12人は命の危険があり、小児科での診察後、すぐ入院になりました。特に小学生は体が小さく、余力がそれほどない。栄養失調や飢餓状態の影響を大きく受けます。子どもだけではなく、保護者の精神的、経済的な負担も大きくなります。

 摂食障害の子どもの大半は、太ることへの恐怖心を持っています。しかも、痩せていることを気にしていないため、なぜ病院に連れてこられたかもはっきりとは分からず、通院する必要性も分かっていない。食べようと思っても、食べられない状態の子どもも多いんです。人間関係を築きながら、少しずつ少しずつ食べる量を増やして、健康の大切さに気づいてもらいます。自分が大事な存在であると気づくと同時に、自己肯定感を高めることも大事です。

 <低年齢層で摂食障害が増えている背景には、痩せていることを礼賛する社会の風潮があると言われる>

 海外では、痩せすぎのファッションモデルは起用しないという動きが広がっていますが、日本では、それほど広がっていません。

ダイエット以外でも

 ただ、摂食障害になるきっかけは必ずしもダイエットだけではありません。

 約10年前、摂食障害になった当時小学6年の女の子は、両親の仕事が忙しくなったことがきっかけでした。さみしさも原因の一つでした。食べる量が減り、半年程度で体重が8キロ・グラム減り、38キロ・グラムになりました。

 入院して2か月ほどで食べる量も増え、退院しましたが、中学入学後、今度は新しいクラスになじめず、ストレスから過食を発症しました。自宅で、チョコレート10枚を一気に食べるなど、食べ出すと止まらない。親が止めようとすると、かばんを投げつけ、暴れる。

 でも、それはわがままでも何でもなく、自分の力だけでは過食を止められない心身の状態になっていたからです。その後も、寝る前に暴れるようなことが1年近く続きました。睡眠薬を処方した時もありましたが、母親が毎夜、そばに寄り添い、子どもの手を握りながらつらい気持ちを聴いたことで、女の子の気持ちも落ち着いていきました。

早期発見が命守る

 <重症化を防ぎ、命を守るためには、早期発見が欠かせない>

 数年前、卓球部のトップクラスの選手として頑張っていた当時中学3年の女の子は、夏の大会に向けたトレーニングが、きっかけでした。体重が減って体の動きも良くなる。48キロ・グラムから、数か月で30キロ・グラムまで減りました。普通は持続できないのですが、頑張り屋なので練習も続けられる。だから、ぎりぎりまで周囲が気づきませんでした。来院した時は、自力で歩くのも難しく、命も危なかった。

 <症状が重症化した患者に対し急激に栄養を取らせると、逆に死の危険が高まる>

 これは再栄養症候群と言われる副作用で、飢餓状態の中、再び栄養を()り始めた時、糖質が供給されると、代謝するリンが大量に必要になります。そのため、体の中のリンが不足し、不整脈や肝機能障害のほか、心不全などを引き起こす場合もあります。子どもが家庭や学校で元気に見えても標準体重より3割ぐらい減り、食べる量が大幅に減った場合は、すぐに小児科医や校医らに相談して下さい。(聞き手 平井宏一郎)

大分県出身。1991年、神戸大医学部卒業後、高砂市民病院(兵庫県)などでの勤務を経て、2009年4月から、現職。日本摂食障害学会評議員。

2012年12月16日 読売新聞)

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