小川恵子の漢方で健康生活
2012年9月7日
日本が誇る漢方医学 
先日、名古屋に帰省した際に、名古屋ボストン美術館で開催されている「日本美術の至宝」展に行ってきました(2012年12月9日まで)。アメリカのボストン美術館から日本美術のコレクションが里帰りしたのです。
ボストン美術館は「東洋美術の殿堂」 と称され、設立された時にアーネスト・フェノロサや岡倉天心によって日本美術のコレクションが始まり、以来、収集が続けられてきました。10万点を超える日本の美術品が収蔵され、世界有数の規模と質を誇っています。その中には、日本の美術を語る上で欠かすことの出来ない優れた作品が多く含まれ、近年の調査においても多くの重要な作品が見いだされています。
どうしてボストン美術館にこんなにたくさんの日本美術品があるのでしょうか? それは、明治維新後に成立した新政府が慶応4年3月13日(1868年4月5日)に発した太政官布告(神仏分離令)などの政策によって廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)運動が引き起こされ、仏教施設や貴重な仏教美術品などが破壊されていたという状況に起因します。フェノロサは、日本では西洋文化崇拝の時代風潮の中で見捨てられていた日本美術を高く評価し、研究を進め、広く紹介しました。ゴミ同然に扱われていた国宝級の美術品を収集し、ボストン美術館のコレクションとしたのです。
数々のすばらしい美術品を眺めながら、明治以降の漢方医学について考えてしまいました。実は、同様の出来事が漢方医学にも起こっていたのです。明治維新以降、1874年(明治7年)の医制の制定で、わが国の漢方医学は滅亡の危機に瀕(ひん)しました。漢方医は医師とは認められなくなり、漢方医学迫害の時代が始まりました。そのような中で和田啓十郎は、西洋医学を学んだ医師でしたが、姉の病気が漢方医学で劇的に軽快したのを見て自ら漢方医となり、1910年に『医界之鉄椎(いかいのてっつい)』という本を著しました。当時の西洋医学の知識を背景に、診断がつかなくても患者さんの症状を改善させることを目的とする治療医学としての漢方医学の優秀性を説き、これが社会的な漢方医学復興の始まりとなりました。
このような背景から、未(いま)だに西洋医学一辺倒で、漢方医学は使わない、もしくはいわゆる漢方嫌いという医師も少なくありません。でも、医師は患者さんを治すのが仕事で、漢方医学だろうが西洋医学だろうが、治す手段や選択肢は多ければ多い方がよいと思います。実はアメリカを中心とする海外では漢方を含む補完代替医療に大きな関心が寄せられています。アメリカで注目されるようになって日本で見直される漢方薬も増えて来ました。ボストン美術館の日本美術のようですね。
世界で唯一、健康保険で漢方が使える日本という国を誇りに思う一方で、日本の伝統である漢方を日本から世界に向けて発信し、東西医学融合のお手本として示すことができればと思います。
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- プロフィール
- 小川恵子(おがわ けいこ)
- 愛知県名古屋市生まれ
- 金沢大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 和漢診療外来 特任准教授
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コメント
中国では西医の病院と中医の病院が、同敷地内に併設されているか、または同じ病院の中に西医部門と中医部門が同居している事が多く、又そうする事を奨励している聞きました。診断には両方の医師が立ち会い、相談・協議をして治療にあたるとの事です。
中医を信頼・信奉している私としては、実に羨ましい限りです。私、今タイのバンコクに居ますが、中華系の病院ではやはり西医、中医が併設されています。片方を切り捨ててしまう様な事をしない、心の広い中国人には感服するばかりです。それぞれ利点が有るはずです。お互いの手法を尊重し合い、最良の療法を模索し、施療すべきと、固く信じおります。
わたしも「ボストン美術館 日本美術の至宝」 を見て日本の美術品が大切に保存されていたことに感銘をうけ、ありがたく思いました。
漢方の世界でも同じようなことが… という記事を見てびっくりしました。
自分は、漢方薬に助けられたことが何度もあります。漢方が見直され助けられえる人が増えるといいなぁと思います。そして、漢方の原料である植物などが環境に左右されないような美しい日本、地球であるようにと思います。
小川恵子先生
漢方の評価が高まっている時にタイムリーな記事を拝見しました。
有難うございます。
治療学としては、西洋医学よりも遥かに歴史と実績のある漢方が、やっと出番が来た感じです。
今後のご活躍を願っています。