宋美玄のママライフ実況中継

2012年8月15日

母乳をめぐる都市伝説

 
ダンボールで初つかまり立ちをする娘

 お盆休みで東京はいつもより人が少ないようです。保育園がお盆でお休みなので、休める仕事は休み、月齢の近い子供がいる友達を家によんでゆったり過ごしたりしています。

 娘は脚の筋肉がしっかりしているとずっと言われてきたのですが、先週つかまり立ちをするようになりました。立ち上がったあとに誇らしげに親の顔を見るのが微笑ましいです。

母乳が足りないのかも

 先週、離乳食について書きましたが、離乳食を食べるようになってから母乳の分泌量が減ってきたようなのです。保育園で「ミルクを飲んだあと哺乳瓶をずっとしゃぶっていますよ。もしかしたら母乳が足りないのかも」と言われたので急に不安になり、職場で休み時間に助産師さんに見てもらいました。「初めの頃よりおっぱいが小っちゃくなったんじゃない?」と言われたのですが、確かに以前ほど緊満感を感じることはなくなってきました。 

 マッサージしながら「いいおっぱいなので頑張ればまだまだ出る」と言ってもらって少し安心しましたが、やはり離乳食を始める前ほど母乳は出ていないようでした。実際の分泌量は分からないのですが、飲みながら娘が時々怒っていたり、ガブッと噛まれたりするので、満足していないのかもしれないと感じていました。

 そして、その後、それを裏付けるように、産後初めての月経が来たのです。授乳中は乳汁分泌を維持するためにプロラクチンというホルモンが出ているのですが、このプロラクチンによって排卵に関わるエストロゲンが抑制されるので、通常、産後は月経が来ないのです。産後7か月にして月経が来たので、月経の煩わしさに加えてプロラクチンが減ってきて母乳が減ってしまうということかと悲しい気持ちになりました。ちなみにエストロゲンそのものにも母乳の量や質を低下させる働きがあり、授乳中にピルの使用をすすめられない理由の一つになっています。

増える努力してます

 現在は母乳分泌が増加するといわれるあらゆる方法をためしています。授乳や搾乳前の乳房マッサージ、仕事の合間の搾乳、母乳分泌が増えると言われている漢方薬、そして何よりも頻繁におっぱいを吸わせること。これによりプロラクチンと愛情のホルモンと言われるオキシトシンを分泌させて母乳の分泌と射乳を促進させています。これらの努力により、全盛期ほどではありませんが、子供の小腹を満たすほどには出ているようです。

 今回の母乳不足感を数人の産婦人科女医と助産師たちに相談したのですが、おっぱいケアの助産師たちにもいくつかの「流派」があるそうです。マッサージの方法だけでも、おっぱいの根元から揺さぶる派や表面を優しくなでるだけで十分とする派など様々なようです。

授乳中の食べ物にも都市伝説

 また、授乳中の食べ物についても医師や助産師、ママ友によって言うことがまちまちです。「餅を食べると母乳の出が良くなる」という人もいれば「餅を食べるとおっぱいが詰まる」と言う人も。また、乳製品を食べると詰まるから食べないという人もいて、授乳中に特定の食材を除去している人も珍しくありません。

 しかし、これらには科学的根拠がありません。おっぱいが詰まるかどうかは乳汁の産生量と出ていく量のバランスであり、母親が摂取した食材によって母乳中の脂の粒の大きさが変わるということはないため、理論的にもありえません。「コラーゲンを経口摂取すれば肌がつるつるになる」と同質の都市伝説と言えます。

 離乳食だけでなく母乳育児にも都市伝説は蔓延しているので、母乳育児の生理について復習しながら意味のある努力をしていきたいと思います。授乳している時間は、オキシトシンが分泌されることもあってか、とても幸せで楽しいです。出来るだけ長く続けたいと思っています。

コメント

疑問
[りか]2013年1月6日

2人目の子どもを母乳育児中です。
1人目の出産直後は検証する余裕もなく何となく口コミで良いと言われている和食中心の食事をしていましたが、あるとき「母乳は血液から出来ているし、血液には恒常性があるのだから食事の影響が大きく出るとは思えない」と疑問に思ってからはバランスよく食べたいものを食べるようにしました。
色々調べてみて、母乳に良い食事の口コミサイトでは「何故この食事が母乳に良いのか」「良い母乳とは何なのか?」の根拠が希薄だったり定義が十分されておらず、感覚的なものばかりであったこと、
ラクテーションコンサルタントの資料に「特定の食べ物が乳腺炎を引き起こすエビデンスはない」とされていたこともその後押しになりました。
結果として、特にトラブルもなく母乳育児を続けることが出来ています。また、正直に書いてしまうと、無駄な努力をせずに済んだとも思っています。


よく餅米は詰まる!とか、おっぱいに良い食事は和食とお米のごはん!とか言う方がおられますけど、餅米とうるち米の大きな違いって、デンプン質が餅米はアミロペクチン100%で、うるち米はアミロペクチン80%・アミロース20%なところですよね。
これらのデンプンはいずれもブドウ糖になって消化吸収されますし、米そのものの栄養成分は同じようなものですから、餅とうるち米とで母乳(質?量?)が変わってしまう理由がピンと来ません。
餅米はお餅として、うるち米はごはんとして食べることが多いので、同じ重さのお餅とご飯を比べるとお餅の方がだいぶカロリーが高くなります。そのために母乳に変化が出る(成分ではなく量的に)のであれば、母乳が十分排出されなくてうっ滞する可能性もあるかと思いますが、実際問題として摂取カロリーと母乳量の関係ってあるのでしょうか。
もっと詳しく知りたいと思います。

家庭科学的か天文科学的か
[選ぶのは個人の自由]2013年1月5日

都市伝説って、これを食べればこうなる的なものですよね。
どのくらい食べて、どのくらい増えるかは言われてないところがいいところです。

科学的となると、食べたものが直接乳に変わる訳ではないということですよね。
食べたものが体内でどう変化して、内分泌を誘導して、その物質がどう関与しているのかという事でしょう。
人工的にプロラクチンやオキシトシンを投与してのデータがほしいところです。

その成分がほしいからと言って、その成分を経口投与してはたしてそのまま必要な体の部分に到達するのか。
そういう事はないですよね。
餅なら酵素で違う形になって運ばれますから。
血液から餅がでてくる事はないでしょう。

乳腺炎や乳汁の量に直接関与している物質が何かということが科学的と言われることでしょう。炎症なら雑菌等とか量的なものならそれを出す伝達物質の存在とか。
餅を糖に変える酵素の量の違いでも差がでてくるのではないでしょうか。

餅を食べればといっても虫歯の有無やかみ合わせでいくらでも変わりますし、一概に食べるという表現ですまされないのが医療現場の難しさでしょう。うるち米の餅でも同じでしょうか。
科学って難しいですね。
でも統計に使う数式は天文学からでてきた数式が使われますよね。自然界の観察からできた数式。標準偏差などが有名です。

かなり信頼できる結果を出してくれるすぐれものです。ただしばらつきという事は避けられません。絶対的なものではないです。
科学的なものと都市伝説。
これはいい!と言ってもアレルギーがあるひとには命に関わりますから、科学的根拠がないときは注意が必要です。

好きなほうを適材適所で選べばいいのではないでしょうか。

特定の食べ物
[なりたて母]2013年1月5日

食べ物によってつまらないという分かりやすい説明ありがとうございました
乳汁が増えやすい食べ物というのはあるんでしょうか?それを食べると増えやすく結果的につまりやすい、というような

もうすぐ一歳の娘がいます
[ママ一年生]2013年1月5日

離乳食と平行して完全母乳を続けています。

母乳育児も一年になります。生後三カ月くらいまで食事には大変気を遣いました。

餅やおこわはもちろん、油や脂肪の多い食べ物は殆ど避けましたし、甘いものはミロのみで一日一杯までと決めていました。母乳に良いとされるゴボウシも毎日煮出して飲んでいました。身体が冷えないように、便秘しないように、食べ過ぎないように、身体を休めるように、ストレスをためないように…と、赤ちゃんにいい母乳を充分あげれるようにと自分なりに努力しました。

しかし生後二ヶ月も経ったある日突然乳腺炎になりました。もちろん食事内容に落ち度はありません。いつもと違うのは、授乳時間が空いてしまったということです。その後は白斑まで出来て治るまで数週間かかりました。

それからは授乳感覚が空いたらすかさず搾乳するようにしました。ゴボウシを煎じて飲む事や食事制限は一切やめました。ちなみに今日まで何のトラブルもありません。

私も餅や油物を食べると母乳がドロドロになると信じていた一人です。母乳は血液から作られるそうですが、もし食べ物の成分が血液の構成をそんなに変えてしまったとしたら人は生きてゆけるのだろうかなどとも疑問に思います。

もう一人産めたら、産後から食事は自由にしようと決めています。

科学的根拠?
[かほちゃん]2013年1月4日

明子さんに同意です。
先生がいつもおっしゃる「科学的根拠」とは具体的に、どういったことなのでしょうか?
餅が乳を詰まらせない科学的根拠と正確に言うには、
100人授乳しているお母さんがいて、100人全員詰まらないという証拠が必要なのではないですか?

でも実際のとことは、食べて詰まる人が現実に存在している。
しかしこれに関しては、
検証された報告が今のところ存在していないから科学的ではないと一蹴しているだけではないのですか?
今後「餅による乳腺炎」に関するRCTでも出てきて実証されたとしたら、
初めて先生は科学的根拠と認めるのでしょうか。

「科学的根拠ないし証拠(エビデンス)」を一言で説明できますか?
つまるところ、統計です。いくらでもいじれるシロモノです。
例えば、ある方法で治療しなかった500人中、210人が亡くなったのに、
治療した500人のなかでは15人しか亡くならなかったとしたら、
その治療は効くと言える、といったものです。
なぜなら、その差は統計的に有意だから。
確率的に偶然とは考え難いほどの差があるから。
それが本当に“科学”なんでしょうか。私は疑問を感じます。
そんな不完全な検証が、果たして“科学”なんでしょうか?

医療者は「科学的根拠」を簡単に口にしますが、
本当のカラクリを知っていたら、軽々しく口にはできなくなると思います。
目の前に起こっている現象に目をつぶり、
「都市伝説」として一蹴する先生の姿勢には謙虚さを感じません。


乳腺をつまらせやすい食品について
[明子]2012年12月30日

科学的根拠がないというより観察不足だと思います。先生も書いておられますが、おっぱいが詰まるのは乳汁の産生量と出ていく量のバランスですが、餅米を摂取するとあきらに分泌増えますし、脂肪分の多い食品を多量に摂取すると母乳の粘性が増し、味も変わり、乳質低下します。実際そういう人が多いです。そして、出産後の乳腺が開通しきってなかったり、母乳の分泌が安定してない時期、特に出産後100日以内にそれらの食品を食べると、急激に乳汁分泌が増したり、粘性が増すことによって、乳腺の太さ、赤ちゃんの吸てつ力、体質にもよりますがおっぱいを詰まらせ、乳腺炎の引き金になることが結構多いので病院のパンフレットには注意する食品として載せることが多いです。

先生の書き方だと何食べても大丈夫ととられかねませんし、実際そう思って食べて詰まってしまったという方もおられます。それに今まで言われてきたことを根拠がない??、都市伝説という言い方で一蹴するのは正直どうかと思います。乳腺炎は相当の苦痛を伴います。医療者として注意していただきたいです。

分泌不足?不足感?
[えむえむ]2012年8月20日

同業者です。乳児の子育て、懐かしく拝見しております。(我が家の子供は小学生、中学生なので)
食事の「都市伝説」いつもながらはっきり伝えてくださり、共感しています。国によって母乳に良いと言われるもの悪いと言われるものが違いますのでやはり「伝説」かと。私は、個人差はあるけれどお母さんと赤ちゃんにトラブルがなければ普通に食べて大丈夫、とお伝えしています。
生理の再開や乳房の張りが少なくなると「足りない」「出ていない」と心配になりますよね。プロラクチンは産後しばらくすると低下しますが、吸われる刺激で一時的に上昇します。乳汁分泌が確立した後は、ホルモン値より、どれだけ乳汁を吸われたか=需要に応じて分泌量はコントロールされますので、吸われていれば必要量は出続けます。乳房の大きさも半年頃に元に戻ることが多いようです。
また、母乳の成分は初乳から成乳への変化はありますが、カロリーや成分は不変です。母乳だけで赤ちゃんへの完全栄養ではなくなるのが、6ヶ月過ぎと言われています。つまり離乳食を開始する時期です。前回のコラムで「母乳の栄養が落ち始める5−6ヶ月」とありましたので、書き込みしました。余計なことかもしれませんがすみません。

乳質
[10ヶ月の母]2012年8月19日

食べたものによって乳質って変わりませんか?
私は毎日搾乳していますが、アイスクリームやお菓子を食べ過ぎた日は明らかに母乳が白いです。
普段は半透明で冷蔵庫で分離しても少しの油脂分が浮いてる程度ですが、白い日は冷やすと浮いてくる油脂も多く感じます。
脂肪分が多いと詰まりやすいかどうかは人によるかもしれませんが~。

私も最近夜中に泣く回数が増えたり、噛まれるようになり、歯が生えてきた頃なので激痛で、足りてないのかな~と不安に思ってました。
生理が始まると乳質と分泌が落ちるんですね。
なるほど~と納得しました!
授乳中は幸せホルモンが出てるんですね♪
テレビを見ながら授乳してたので、いけないな~と反省、もう少しかみしめて授乳しようと思います。

沢山ハイハイした子は骨が丈夫になると専門家に聞いたのですが、うちも捕まり立ちが楽しいようで、立ってばかりです。
長文失礼しました。

確かな目
[りょう]2012年8月19日

休める仕事は休んで、月齢の近い子どもがいる友達を家によんでゆったり過ごす…いいですね!
「母乳育児にも都市伝説は蔓延している」わたしも、そう感じます。
人類が何万年もやってきたことをなるべくはずれないようにしたら、悩まなくていいことで悩む人が少なくなるのではないかな。
この情報社会のなかで、情報不足のために母乳育児がうまくいっていない人がたくさん。
宋さんの確かな目には励まされます。

意外に思いました
[みかん]2012年8月18日

先生ほどの博学な方も、母乳都市伝説にふりまわれているのかと思いました。
私は第二子を育てています。
第一子の時に母乳が出にくくて悩んでいたので、「母乳が出る方法や、ツボなど教えてください」と鍼灸師さんや助産師さんに聞いていました。
2人目になると、皆さん「それはその時だしね~。諦めというか、受け入れるのがいいかもよ~」と軽く言ってくださいました。

第一子の時の、プレッシャーになった母乳育児押しつけがなくなって、びっくりです。
母乳育児に厳しい病院でしたが、第二子になると、とてもゆるやかに、ミルクを勧めてくれました。

今のところ、四ヶ月母乳で育てています。
その時が来たら、その時かなって思って、母乳に入れ込む育児をする気はないです。
もう一人、大騒ぎの子供がいるし。

1人目はゆっくり、母乳にこだわる育児ができるといいですね。
私は1人目は3ヶ月で完ミだったので、そういう幸せ味わえなかったので、1人目からそういう幸せを味わえるなんて、幸せですね!

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プロフィール
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宋 美玄(そん・みひょん)
産婦人科医、性科学者。
 
1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら
 
このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)について、詳しくはこちら
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