医療ルネサンス高岡フォーラム 「健康長寿のための生活習慣、心の持ち方」

対談(1)忙しい中でも、のんびりすること大事

 基調講演に続いて、鎌田さんと、南砂(みなみ・まさご)・読売新聞東京本社医療情報部長の対談が行われ、食生活や運動の重要性などをテーマについて話し合いました。

諏訪中央病院名誉院長 鎌田實(かまた・みのる)
 1948年東京都生まれ。74年東京医科歯科大医学部卒。諏訪中央病院に赴任し、地域と一体になった医療、患者本位の医療を進めた。チェルノブイリ原発事故の被災地に医師団を派遣したり、戦争で傷ついたイラクの子供たちに医薬品を送ったりするなどの活動を続け、東日本大震災でも被災地支援に取り組む。
 2006年、読売国際協力賞を、鎌田さんが理事長のチェルノブイリ連帯基金が受賞、11年NHK放送文化賞受賞。
 著書はベストセラー「がんばらない」(集英社)など多数。近刊に「『がんばらない』を生きる」(中央公論新社)がある。
読売新聞東京本社医療情報部長 南砂(みなみ・まさご)

  心の持ち方と健康との深いつながりを、鎌田さんは基調講演でお話しされました。私たちが生きていく上で、自律神経が大きな働きをしていると聞きますが、どのような働きをしているのでしょうか。

 鎌田 自律神経には、活動時に優位に働く交感神経と、リラックス時に優位に働く副交感神経があり、私たちをコントロールしています。副交感神経が刺激されると血管が拡張して血圧が下がるため、脳梗塞や心筋梗塞、血管性の認知症になる危険性が下がります。交感神経が刺激されると、逆に血圧は上がり、これらの病気の危険性を高めます。現在のストレス社会の中では、副交感神経を上手に刺激している人が元気で長生きします。

 そのためには、忙しい時間の中でも、のんびりすることが大事です。例えば、ちょっとぬるいお風呂に「気持ちいいな」と思って入っている時は副交感神経の時間です。忙しい時には「夕日がきれいだな」と、数秒立ち止まるだけでもいい。

  なるほど。それは、行動変容によって副交感神経の時間を長くするように自分で習慣づけることができるっていうことですよね。

 鎌田 そうです。

笑っていると、心身ともにいい事起き出す

  「笑う」こともいろいろな効果があると言われています。

 鎌田 僕の『それでもやっぱりがんばらない』という本の中に、ノーマン・カズンズ(1915~90年)という、アメリカを代表するジャーナリストを取り上げています。

 多くのアメリカ人は、広島や長崎に原爆を落としたことについて、真珠湾攻撃を日本は最初にやったじゃないか、開戦してきたのはそっちだということを理由に、原爆を落としたことを肯定しているんですね。でも、ノーマン・カズンズは、アメリカは非常にいけないことをしたと、原爆投下を批判します。親日派でした。

 彼は、強直性脊椎炎という種類の膠原(こうげん)病になり、手足が腫れて動けなくなりました。ところが特効薬のステロイドを使わず、徹底してビタミン剤の摂取と笑うことで治そうとします。すると膠原病が完治したんです。

 病室にはとにかく冗談を言ってくれる友達だけを入れるんですね。友達の中にいますよ、見舞いに来て「おまえ、こんなことしてるから病気になるんだ」ってお小言を言っていくやつ。そういう人は絶対病室に入れない。だじゃれでも何でもいいから笑わせてくれる友達だけを入れて、とにかく一日中笑っている。笑っていたら、動かなくなった関節が動くようになって、念のために血液のデータを調べたら、治らないはずの──膠原病って基本的には治らないことが多いんです──治らない膠原病がどんどんデータも改善していって、完治しちゃうんです。

 すべての病気が治るわけではありませんが、笑うことは大事なことです。フランスの哲学者アランが「幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せになる」と言っています。つらいことがあっても笑っていると、心身ともにいい事が起き出します。

 笑うことで病気が治るというほど簡単ではないけれども、笑うってすごく大事なことです。

 泣くことも笑うことと同じような効果があるということがわかってきました。泣くのも悲しいときには我慢しないほうがいい。被災地なんかでも、一回泣いた人のほうが立ち直りが早い。ずっと我慢しちゃっている人のほうが、鬱々とした気持ちが残ってしまう。だから、泣きたいときには泣き、そしてできるだけ笑うということを生活の中に取り入れることが大事です。(続く)

2012年7月25日 読売新聞)

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