基調講演(5)ちょっとしたきっかけで人は変わる…鎌田實さん
東北の人を助けたいと思い、「鎌田實と東北へ行こう」という企画を立て、車椅子の人やうつ病の人やがんの人たちに呼びかけて、昨年、福島に行きました。北海道から鹿児島まで250人の人が集まりました。最終日に福島の果樹園に行ったんです。その果樹園のオーナーは僕たちが行く前の日に放射能測定をしてくれたのですが、「申しわけない、このブドウの種類だけ40ベクレルが出ちゃいました。ほかは大丈夫です」と言います。この果樹園のオーナーは正直者で偉いなと思いました。
当時は1キロあたり、500ベクレルまでは売っていいし、食べていい。だから、500ベクレル以下だから黙っていてもいいのに、このおやじさんは「申しわけない、この種類だけ40ベクレルです」。そうしたら、車いすのおじさんが、1個1個味見をして食べて「おい、この40ベクレルが一番うまいぞ」って言い出すんですね。
ほんとうにうまいかどうかなんてわからないですよ。で、さらにね、こう言うんです。「こんなにうまいブドウは若い者に食わしちゃいけないな」と。
ユーモアがあってしゃれていますよね。若い者はちゃんと守ろう。でも、聞きようによっては、「おれたち先が短いから、おれたちにはうまいもの食う権利がある」とも受け取れる。ここが、またいいところですね。
福島の人たちを応援し、そして、若い人たちは守ってあげようと、両方のことを考えているんですよ。偉いなと思いましたよ。
日本で元気に生きるため…ちょっとしたことでも感動 / 人のために何かする
今、日本で元気に生きていくためには、ちょっとしたことにも感動して、人のために少しでも何かしてあげることが大事です。そして、野菜を多く取るとか、できるだけ魚を食べるとか、生活習慣を変える行動変容も重要です。少しずつでも、変える努力をしてみてください。人は変わりにくいけれど、必ずちょっとしたきっかけで変わります。
ご清聴、どうもありがとうございました。(拍手)(続く)
(2012年7月24日 読売新聞)
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