石井苗子の健康術
2012年7月13日
それでも、愛している

(主役のメル・ギブソンの私生活の言葉のようです)
「日本パペットセラピー学会」をご存知の方はいらっしゃるでしょうか。人間ではなくて人形(パペット)を通してセラピーを行う事を研究している学会です。
例えば、コミュニケーションの道具として、キツネのぬいぐるみをセラピストとの間に介在させることによって話ができる場合があります。
繰り返していくうちに悩み事を解消することができ、だんだん他の人とも会話ができるようになっていく……、これはパペットセラピーの成功例と言えるでしょう。
6月23日から公開されている、メル・ギブソン主演、ジョディ・フォスターが監督の映画「それでも、愛している(The Beaver)」は、ビーバーのぬいぐるみによる、パペットセラピーがテーマ。
うつ病に苦しむ父親(メル・ギブソン)が自殺未遂の瀬戸際で偶然ビーバーのぬいぐるみを手にします。そこから、ぬいぐるみと自分との心の対話がスタートしますから、妻や息子の理解を得ることができません。
ある日お父さんがビーバーのぬいぐるみをスッポリと左腕にかぶせ、その口をパクパクさせながらスラスラしゃべり始めたという感じです。これでは「これまでの治療は一体なんだったんだ!」と思われてしまいます。
加えて、このビーバーのぬいぐるみのせいで、父親がビジネスのアイデアまで浮かび、倒産寸前の自社の業績を上げたため、ビーバーのぬいぐるみとテレビ出演まですることに。
メディアは次第に「うつ病関連」を話題にして本人を興味半分で眺めるようになっていきます。
童話の「赤い靴」を思わせる、衝撃のラストにはびっくりさせられましたが、これらは映画を面白くするための筋書きでしょう。
問題は、セラピーの使われ方や周囲の理解力が正確に描かれていないことでしょう。映画の中でも、医師から「うつ病が躁転しているだけだ」と注意されたと、妻が夫に訴えかけるシーンがありますが、医学的にはよく言われることです。
人形を使って心のよりどころを作るのは、治療の途中経過にすぎないということです。最終的なゴールは人形が自然にいらなくなることです。
情報誌に、最近のメル・ギブソンの私生活のゴタゴタにエールを送るために、ジョディ・フォスターが贈った出演依頼だったというのがあり、ネットで調べてみましたが、かなり重い私生活を彼は送っている様子です。「それでも、愛してる」と邦題をつけたのは皮肉かしらと思ってしまいました。「ビーバー」というタイトルそのままで良かったのにと。
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