Dr.北村の「性」の診察室ブログ
2012年7月13日
ボーイフレンドができたら・・・

「先生、彼ができたから連れて来ちゃった」
数年ぶりに受診したKちゃんに会っても、直ぐには思い出せませんでした。大学1年生になったKちゃんは、小学高学年の頃に月経が不順だということで外来に通っていた女の子。「バカに大人っぽくなったね。もうやっちゃったのか」と品のない言い方をした途端、反撃され撃沈したのは僕の方でした。「だって、彼ができたらセックスする前にクリニックに連れて来いって言っていたじゃない」
そう言われてみれば、患者に対して僕が最も頻繁に投げ掛ける言葉がこれなのです。「いいかい、ボーイフレンドができたら行動に移す前にクリニックに連れて来なさいよ。クリニックというと抵抗されるかも知れないから、『会って欲しいおじさんがいるの』でいいのだ」と。
思春期外来に関わってからあっという間に23年が経ってしまいました。月経がだらだら続く、月経痛、月経不順、月経の時期を移動したいなど、いろいろな悩みを抱えて受診する女の子たちも、やがて僕の前から去っていく日が訪れます。そんな時、決まって渡す『卒業証書』に書かれている言葉です。
| こんな経験をしたら早めに受診をしてください |
|---|
| 1. 月経のない期間が3ヶ月を超える 2. 月経がだらだらと8日を超えて続く 3. 月経の前・中・後にお腹が痛いなどの不快な症状がある 4. ボーイフレンドができた |
「家族や親族を除いたら、僕以上に長い間関係した男性はいない。だから、将来どんなに素敵な相手があなたの前に現れても、まずすべきことは僕のところに連れてくることだ。そしたら、同性の目で品定めをしてあげられる。セックス経験がある相手であれば性感染症の検査が必要だし、避妊を相手任せにはできないからね」
Kちゃんは、この僕との約束を守って受診したというのに、「もうやっちゃったのか」はないでしょう。事情を飲み込むことのできた僕は、Kちゃんとのお付き合いを始めたという相手を診察室に招き入れてこう切り出しました。
「よく来てくれたねえ。Kちゃんからクリニックの話が出たとき驚いたろうね」と尋ねると、彼は堰を切ったように話し始めました。
「当然です。僕たち大学の同級生で、付き合って4ヶ月。二人ともいい雰囲気でデートしていた時なのです。何気なくキスを迫った途端、『ちょっと待って!』と拒否されて・・・」
「そしてどうしたの?」。おじさんとしては興味津々聞き返しました。
「『私の頭の中で北村先生が叫んでいるの。行動する前にクリニックに来い』と。お願いだから一緒に北村先生に会ってくれないかと、その時求められて。僕としては、先生がどんな人がまったく知らないし、突然Kちゃんの口から男性の名前が出てきて困惑したのです」と。
彼には、Kちゃんと恋愛する前に他の女性とのセックスの経験のあることがわかりました。だから、性感染症の検査を勧めたところ、一週間後に判明した検査結果は「クラミジア陽性」。性器クラミジア感染症にかかっていることがわかったのです。もちろんですが早速治療に入り、それから2週間後の検査で「陰性」が確認されました。Kちゃんは避妊を低用量経口避妊薬(ピル)で、彼はコンドームを使うことで、程なく晴れて二人は結ばれることになりました。
「セックスする前に必ず戻って来いよ」。医者の言葉か?という気持ちがないわけではありませんが、こうやって繰り返すことによって、若い世代がいいセックスをスタートできれば医者冥利に尽きるというものです。
※この話は、『Dr北村のJFPAクリニック』の中で、伊藤理佐さんに描いてもらった4コマ漫画でも紹介されています。一度遊びに来てみてください。
『Dr北村のJFPAクリニック』:http://www.jfpa-clinic.org/
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- プロフィール
- 北村邦夫(きたむら・くにお)
- 自治医科大学医学部卒業後、産婦人科医として保健所など衛生行政の分野で実績を積み、1988年から日本家族計画協会クリニック所長。
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コメント
マイドクターが居るのであれば、昔からのお付き合いでちょっと調子が悪いなぁと思えば
しっかり見てもらえるところが良い
私も、マイドクター(掛かりつけ医)が居るので(泌尿器科・皮膚科・内科の個人業)助かります、私が専門に掛かっているのは、泌尿器科です。
僕は先生を変態だとは思いません。
文章を見ればどういう意図でどういう行動をとっているか分かるからです。
しかし、世の中で真意が伝わることが何割あるかと考えれば、変態といわれる可能性もあるわけです。
これが医療に限らず、公共サービスの難点です。
(理解が悪かったり、いちゃもん好きな人にも対処せねばならない。)
前提条件に対する理解、行動に対する理解、その他一筋縄ではいかないと思います、
(もしうまく行ってるなら、ここに記載されないで済んでいるはずですから)
まあ、そんな感覚が伝わるようにと実名で投稿しているわけですが・・・・
学校や保健所などの公的機関(お偉い様)が見て見ぬふりをするのがこの国独特の陰湿たる体質。
それに待ったをかけようとしている産婦人科医(思春期ホームドクター)が全国に散在しています。
傍から見てもまっとうな行動・言動です。
真剣に一人一人の人間と向かい合う医療、まさにそれを実践していらっしゃる北村Dr.はご立派!
陰ながら我々も応援しています。
性の事は両親から教わってます。
でも、感染症などウイルスにまつわる事までは教えてもらってないです。
学校でも原理的な事は教わりますけど、それで限界でしょう。専門的にテストやられたら保健の教諭にかなう術はないでしょうから。
妊娠の時の腹部形状を月齢毎に間違っている線を指摘しなさいという問題で正解者はほんのわずかでしたから。
やはり、医院を訪れて、ウイルスの変異や定点観測で出ている情報も交えて臨床経験を踏んだ医師と会話をしたいですね。
バースコントロールや彼女の生理の具合、ピルを服用した時の注意点など、男性が知って於かないといけない事満載ですから。
しかも個別にきけるので、なおいいです。
問診票に何をしにきたか書けばいい訳ですよね。他の科とかわりない印象です。
相談内容を紙に書いて、それを問診票に写すだけですよね。
家族計画を相談とか、感染症の相談とか。
どうせ妊娠すれば感染症の検査しますから、その前に判っていれば助かります。胎児が。
エックス線でわかるといいですね。
そんな時代が来る事を願っております。
まだ、全部をスキャンできる波長がないでしょうから、今は無理としても。
きっと放射線じゃなくて、調べたいものから出る固有の振動をすべて感知できるセンサーあたりに期待しています。被爆ゼロを目指して。
周囲の理解と立場。
これが、一番難しい問題だと思います。
本来であればアナウンスをするのは、学校や保健所などの公的機関だと思います。
「何がどの程度起こると危険性が高い状態が推測されるのか?」
一般人では専門用語が分かりませんから、一般人でも分かる言葉や図で説明する必要があります。
最終的な判断は産婦人科医によってなされるとしても、産婦人科を受診する際のキーワードは必要になると思います。
文章では、先生が個人の活動でやっておられるように見受けられますが、そういう試みは組織的に行われる方が有効なことだと思います。
ま、組織が協力的でないから、個人で奮闘しておられるのかもしれませんが・・・・
アメリカで家庭医をしています。妊娠出産および、女性の健康にかかわる仕事をしていますが、日本人女性の避妊に関する認識および知識のなさは、どこからくるのかといつも思っています。
どうやら、どこでも習わないし、それを注意してくれる人もいないようなのです。アメリカだと、主治医が10代の頃から何度も検診のたびにいうのですが、これが、日本ではないようにおもいます。
北村先生みたいな先生にみんながかかっているといいのに、と思います。どんどん広めてください。