Dr.北村の「性」の診察室ブログ
2012年7月6日
膣の神秘

ドイツ語ではシャイデ(Sheide:刀の鞘)、ラテン語ではワギナ(vagina:剣の鞘)と呼ばれる器官が膣(ちつ)。中国のタオ(道教)には、「ワギナとは宇宙のすべての生命の源」と表現されています。そんな神秘と夢に満ちた場所だからこそ、男性は異常なほどの興味をそそられるのかも知れません。
そんな膣には主として4つの役割があります。ひとつは月経血の通り道、自浄作用、性交時のペニスの受容器、産道などです。
まずは、膣の大切な役割である月経血の通り道が閉ざされたお話からいたしましょう。広くアフリカで行われている女性性器切除(FGM: Female Genital Mutilation)のひとつなのでしょうか、産まれた直後にお産婆さんによって処女膜を無理矢理閉じられてしまった女性がクリニックを訪れたことがあります。
13歳になった彼女は、腹痛と腰痛を周期的に経験していました。小児科や外科で受診するも埒(らち)が明かずに、最後にたどり着いたのが僕のクリニックでした。腹部から超音波診断装置を使って診ると、膣の径が9センチほどに膨れていて、月経血が溜まっているのが一目瞭然でした。処女膜閉鎖症。処女膜を小さく切開した途端1500グラムの月経血が“飛び出して”一件落着。エジプトで生まれた日本人で、母親の記憶を辿った結果、処女膜が閉じられてしまっていたことがわかりました。
膣の内部にはデーデルライン捍菌(かんきん)という乳酸菌の一種が常在しています。これが膣内を酸性に保つことにより、有害な細菌の発育を阻止しています。これが膣の自浄作用と呼ばれるものです。だから膣の内部を洗うのは大間違い。洗う必要などありません。石鹸を使って洗う女性もいますが、そんなことをすれば、大切なデーデルライン捍菌まで洗い流してしまい膣炎の原因になりかねません。
デーデルライン桿菌は、女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)の影響を受けています。したがって、エストロゲンの分泌が活発ではない思春期前や閉経以降の女性は、デーデルライン捍菌の働きも弱くなります。そのため、膣炎などが起こりやすくなります。
性交時のペニスの受容器ということで、刀や剣の鞘という言い方がもっとも似合ってはいますが、膣は鞘のように内部が空洞になっているわけではありません。ふだんは粘膜によって閉じられています。だから腟の口径は直径とはいわずに横径というのですが、これが2センチほど。そして長さは7センチから10センチほどです。しかも、膣は人間の器官の中で最も伸縮性に富み、容積の変化が著しい管状の器官なのです。
アメリカの性科学者であるマスターズ博士とジョンソン女史が100人の未産婦を調査した結果によれば、性的に興奮した膣は横径で5.75センチから6.25センチにまで膨らみ、長さは9.5センチから10.5センチに拡張したといいます。この現象をテンティング(テント状)、バルーニング(風船状)と表現します。実は、膣壁はアコーディオンの蛇腹のような襞になっていて、ペニスの挿入などの必要時には伸びることで、大きなペニスも受容することができます。
膣そのものは極めて鈍感な器官であるという実験結果もあります。キンゼイ報告(米国)によれば、5人の産婦人科医が800人の女性を対象にして行った実験ですが、綿棒を使い、クリトリス、膣壁、膣入口、後膣円蓋(膣の一番奥、子宮頸部の裏側)など女性器の16か所に触れ、女性の反応を調べました。そのうち膣の内壁に綿棒を接触させたとき、それを感じることができた女性は800人中14%に過ぎませんでした。
ちなみに、クリトリスや大陰唇、小陰唇の場合は、97%の女性が綿棒の接触を認識できたそうです。このことから考えても、膣が如何に鈍感な器官かがわかると思います。ですから、3キロ近くの赤ちゃんの直径10センチの頭が産道を通って出てこられるのです。
このような神秘に満ちた膣の解剖や生理を十分に知った上で、自己管理に努めるだけでなく、性交に際しては、大切に扱って欲しいと願っています。
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- プロフィール
- 北村邦夫(きたむら・くにお)
- 自治医科大学医学部卒業後、産婦人科医として保健所など衛生行政の分野で実績を積み、1988年から日本家族計画協会クリニック所長。
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コメント
この記事で触れられている女性性器切除(FGM:Female Genital Mutilation)の例は不幸中の幸 とでも言える軽度の障害で済んだのではないかと思われます。
アフリカや回教国の各地では(全体ではないとしても)新生女児の割礼としてクリトリス・小陰唇などを切り取ってしまう風習があるそうです。
男性の包皮を切除するのは簡単ですし 将来の性感も保存されますが 女性の場合はペニスの亀頭に相当する部分をちょん切ってしまうことになるので 素人手術による感染症、外陰部の変形、性的刺戟にたいする不感症など不幸な結果をもたらすことが多く、 WHO国際保険機構でも問題になっていると聞きました。
そもそも何故そのような残酷な風習が生まれたのか 多分クリトリスを取り去ることによって「女性の淫乱を防ぎ貞操を守らせる」のが目的ではないか。それに比べると日本にはこのような理不尽な社会的制約や因習がないので ラッキーと言えるのではないでしょうか。
尚更、男性は女性をいたわるべきでこそ、明るい日本が、待ってます!
膣に常在する菌の平衡が崩れるとよくないです。
バランスをもって共存していると聞いています。
抗生物質などを服用するとバランスが崩れる時もあるので医師と相談するといいそうです。
「ガールズガイドセックス」というDVDに膣の拡がる姿がでています。
生理用タンポンのアプリケーターの長さが丁度感覚がある部分でその先にタンポンを位置すると違和感が少ないともメーカーのポータルで紹介されてます。
女性器を閉ざすのは習慣があるみたいです。
尿の排泄できる隙間だけのこして、あとは縫合してしまうと。儀式的、習慣的なものでしょう。
性器に対して人はいろいろな思いをいれているので、教えるのは難しいです。
処女膜ひとつにしても、それの受け止め方は星の数ほどあるみたいだし。
各ポータルサイトや本や漫画では「ヴァギナ 女性器の文化史」、「もやしもん」とかに別けて性の情報として現存しているみたいです。広く知る事が必要なので、尚更「性」への理解って難しを増す感じです。