聞こえ方 気遣いで改善
相手と正対/語尾をはっきり
加齢で聴力の衰えに悩んでいる人は多い。一般的な対処法は補聴器を使うことだが、本人の意欲や周囲の気遣いで、聞こえ方がさらに改善されることがあるという。
大阪府吹田市の女性(79)は4年前に補聴器を買ったものの、会話のやりとりがうまくいかず、悩んでいた。そんな時、大手前病院(大阪市中央区)で、聴覚障害などのリハビリを行う言語聴覚士の前山啓充さんに「相手に自分が難聴であると伝え、自分から相手に近づいたり、ゆっくり話してもらうよう頼んだりしてみて」と助言された。
女性は「難聴だと知られるのが嫌だったけれど、思い切って実行してみたら随分聞き取りやすくなり、外出が楽しくなった」と喜ぶ。
高齢者の聴力低下は、耳に入った音を電気信号に変換する内耳の細胞が老化することで起こる。単に音が小さく聞こえるだけでなく、高音や子音が聞こえづらく、「音は聞こえても、話す言葉が聞き取れない」という人が多い。
同病院では、患者の生活上の困り事に合わせ、個々に解決策を提案する。「家族にテレビの音が大きいと言われた」のなら、身近に置けるコードレス式スピーカーや、無線で補聴器にテレビの音声を送る機器などの補助具の活用を勧めている。
ただ、市販の補助具の中には使い方によって耳を痛める危険性があるものも。同病院耳鼻咽喉科部長の川島佳代子さんは「使用前に必ず医師や言語聴覚士に相談してください」と注意を促す。「本人も家族も『高齢だから仕方ない』と考えず、早めの受診を」
難聴の高齢者がスムーズに会話できるようにするには、周囲の協力が大切。ヒントになるのが、耳鼻咽喉科受診の必要性を判断する目安にと作られた「聞こえの自己評価表」だ。
作成した東京大学客員教授(聴覚障害学)の大沼直紀さんは「本人がどれぐらい聞こえにくいのかを把握すれば、手助けしやすくなります。家族も一緒になって採点して」と話す。
難聴の人との会話は耳元で大きな声で、と思っている人は多い。だが、大沼さんによると、それでは声が割れ、逆に聞き取りづらくなるという。「相手と正対し、ゆっくり、自然な抑揚で話す」のが基本。ほかに、「語尾をあいまいにせず、はっきり言い切る」「複数の人が同時に話さない」「テレビや水洗いの音など、周囲の余分な音を極力減らす」ことを心がけるとよい。
大沼さんは「難聴を理解してくれている人が身近にいれば、コミュニケーションがうまく取れないことから生じる孤独感を減らすこともできる」と話している。
| 聞こえの自己評価表 |
|---|
| 〈1〉2人以上の人が同時に話し始めると、よく聞き取れなくなる 〈2〉自動車の中での話がよく聞き取れない 〈3〉周囲の人がモグモグ話していると感じる 〈4〉家族や知人らが「補聴器をつけてみたら」と考えているようだ 〈5〉騒音の多い職場や大きな音のする環境にいる(いたことがある) 〈6〉相手にもう一度言ってほしいと頼んだり、そうでなければ会話内容を推測して判断したりしている 〈7〉話し相手の顔を見ている方が話がよく分かると感じる 〈8〉テレビドラマのセリフがよく聞き取れない 〈9〉携帯電話の着信音に気付かないことがある 〈10〉集会や授業などで話が分からなくて困る (「そうだ」「そうかもしれない」「そんなことはない」で回答) ※「そうだ」の項目数×5、「そうかもしれない」×3、「そんなことはない」×1で計算し、合計が15点以下なら特に問題なし。30点前後なら耳鼻科で聴力検査の相談を、40点以上なら詳しい検査に加え、補聴器の使用も検討する。 |
(2012年6月29日 読売新聞)
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