(1)心臓外科医 器用だけでなく、胆力が必要
読売新聞の医療サイト「ヨミドクター」は6月19日、東京・東銀座の読売新聞東京本社に、心臓外科医の南淵明宏さん(東京ハートセンター長)を招き、有料会員限定の講演会「心臓手術の現状と賢い病院活用法」を開きました。南淵さんはユーモアを交えて心臓手術や病院の舞台裏を紹介。参加者は熱心にメモを取っていました。本日から6回に分けて講演内容を紹介します。
本日も心臓手術を行ってから、こちらに伺いましたが、手術は大変うまくいきました。順調です。講演は本業ではありませんから、どうなりますか、わかりませんが、よろしくお願いします。
ポーランドの初代大統領であるレフ・ワレサ氏の言葉に「社会を動かす本当の知恵は、仕事の現場にしかない」というものがあります。私は先ほど、心臓手術を行ってきたとお伝えしましたが、私は現場にいるということを言いたかったのです。現場を知らない政治家もいるようですが、皆様の多くは現場におり、社会を動かす尊い存在なのです。
テレビなどの取材も受けさせていただいております。今年2月に天皇陛下が心臓手術を受けられた際には、NHKで解説させていただきました。日本テレビの番組「真相報道バンキシャ!」にも出演しました。私が行っている心臓手術がどんなものであるのか、少しでも、皆様に理解していただけたらとの思いで説明させていただいています。
天皇陛下が手術を受けられた原因は「虚血性心疾患」でした。最近も、俳優の渡辺徹さんが、この病気で治療を受けられましたね。この時もマスコミに解説を求められました。「そもそも、虚血性心疾患とは何ですか」などと聞かれ、「もう何度も説明したのに」と思うことがあります。しかし、一般の人たちに理解してもらうため、何度も説明するのは、プロの心臓外科医の宿命、義務であると思っています。
患者さんに説明し、理解してもらうのも医師のプロの技の一つです。言葉にすることで、自分の頭を整理することもできます。
(心臓手術の模様を撮影したビデオを上映)
心臓手術の一つに、冠動脈バイパス手術があります。これは、心臓の筋肉に酸素を送っている冠動脈にバイパス血管を縫いつける手術です。狭心症や心筋梗塞の「虚血性心疾患」を治す治療です。胸板の裏を走っている内胸動脈をバイパス血管としています。この血管は普段あまり重要ではありません。
大変細かい手術です。動脈硬化が進んだ血管は、手慣れた医師でないと破れてしまいます。丁寧にやらないといけません。
そう言うと、「器用ですね」と言われるのですが、これは相当に医師をバカにした言い方です。器用だけでなく、胆力が必要だと思います。失敗したら、患者さんが亡くなってしまうという状況で手術をしています。手術室でカメラが回っていることも多いので、手術は多くの人に見られているようなものです。看護師、麻酔科医らも見ていますし、衆人環視で行われているのです。
そのような高まった緊張をむさぼり食いながら手術をするのが心臓外科医なのかな、とも思ったりします。
| 南淵明宏 |
|---|
| 1958年大阪生まれ。大崎病院東京ハートセンター(東京都品川区)のセンター長。心拍動下(オフポンプ)冠状動脈パイパス手術のスペシャリストとして年間200例以上を執刀する心臓外科医。天皇陛下の手術を執刀した順天堂大・天野篤教授と親交がある。 |
(2012年6月27日 読売新聞)
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