シリーズ「食べ物の放射能を測る」~おにぎり編~(3)
コンビニエンスストアのツナマヨネーズおにぎりから、1キログラム当たり約1ベクレルの放射性セシウムが検出されたと書いたところ、複数のご意見をいただいた。「原発事故前から食品に放射性物質はあったはずだ」「1ベクレルなんて微々たる量で不安を煽(あお)らないでほしい」といった内容が目立った。
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独立行政法人農業環境技術研究所(茨城県つくば市)は、1959年から土壌や作物に含まれる放射性物質(ストロンチウム90とセシウム137)の量を測定している。
このうち、白米に含まれるセシウム137を見てみると、約50年間で最も数値が高かったのは1963年で、1キログラム当たり約4ベクレル(全国平均)含まれていた。当時、海外では大気圏内での核実験が盛んに行われており、日本にもたくさんの放射性物質が降り注いでいたためだ。
その後、核実験が地下で行われるようになると、降り注ぐ放射性物質はほぼなくなった。放射線を出す能力が半分になるセシウム137の半減期は約30年だが、白米に含まれる量は30年もたたずに減っていった。その理由について、同研究所研究コーディネータの谷山一郎さんは「セシウムは土と結び付く性質があり、降下物がなくなれば農作物に及ぼす影響は時間とともに減っていく」と説明する。直近の2010年では、1キログラム当たり0.035ベクレル(同)まで減っていた。
今回測ったおにぎりからは、セシウム137が同0.75ベクレル検出された。白米によるものかどうかはわからず単純比較はできないが、数値だけ見れば原発事故前の約20倍ということになる。谷山さんは「一概には言えないが、原発事故が影響している可能性は否定できない」と指摘する。
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さて、1ベクレルという数値をどう考えればいいのだろうか。内部被曝に詳しい元放射線医学総合研究所の内部被ばく評価室長、白石久二雄さんに話を聞いた。
大気圏で核実験が盛んに行われていた60年代、食事で摂取していたセシウム137は1日当たり最大5ベクレルだったという。白石さんは「50年たった今、当時から生活している人が内部被曝によって何か健康被害を生じたかと言えば、そうは言いがたい」と話す。
では、現在、食事からどれだけセシウム137を摂取しているのか。白石さんは、報道各社が行った調査から、福島県に住む人の平均は60年代当時と同じぐらい、東京に住む人は、それよりかなり低いとみている。「過去の経験から言えば、現状では人々への健康被害はそれほど生じないのではないか」と推測する。
ただ、白石さんは「低線量被曝が体にもたらす影響は、科学的には明らかにされていない」と付け加えた。「日本には今、数ベクレル程度の低い放射性物質を含む食品がたくさんある。この程度なら、食べても健康被害が出るとは考えにくいが、放射性物質は体内の組織に吸収されていく。影響がわかっていないからこそ、避けられる被曝は避けた方がいい」とアドバイスする。
そして、最後にこう締めくくった。
「食べ物に含まれる放射性物質を測ることは安心、安全につながる。食べ物を測ってデータを公開した上で、内部被曝が及ぼす健康への影響を調査研究し、その正確な結果を国民や世界に示すことが、原発事故を起こした日本の責務である」
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コラム「放射能と向き合う」は、医療情報部の利根川昌紀記者が担当しています。 ご意見・情報は こちらへ。
(2012年6月25日 読売新聞)
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