小川恵子の漢方で健康生活
2012年6月22日
不妊と漢方
女性の社会進出に伴い、結婚年齢・出産年齢が上がっています。そこで、初産の高齢化を警告するさまざまな知識を広げようという動きが高まってきました。特に重要とされているのが、卵子の老化つまり加齢によって不妊になる、ということです。35歳以上の妊娠が高齢出産と定義されているため、35歳をひとつの節目と考えて「35歳までは大丈夫」と思う人が多いようですが、卵子が妊娠する能力は、33歳から下がり始めると言われています。このような女性の体に関する平均的な知識を知ることは重要です。また、閉経してしまうと妊娠することはできなくなってしまいますので、ある程度の年齢制限はあると思います。しかし、個人差が非常に大きいのも事実です。
今回は、漢方と不妊についてお話ししたいと思いますが、特に私の外来でのお話に限定させて頂きたいと思います。というのは、不妊を専門にされている先生方も多く、医師によっては治療方針が異なることがあるからです。
漢方外来には、妊娠を希望されたり、妊娠に備えて体調を整えたいと希望されたりして多くの女性が受診されます。また、数年の不妊治療に疲れ果てて受診されたり、排卵誘発剤やホルモン剤の使用による不快感を訴えて受診されたりする方もいらっしゃいます。そんな方の心身のバランスを整えるのが漢方薬です。患者さんにはよく「土台をつくる」という言い方をするのですが、いくら不妊治療をしても、もともとの体調がよくないと妊娠が継続できなかったり、治療による副作用が大きく出てしまったりします。そこで、「土台をつくる」ことによって状況を改善するわけです。
私の外来では、患者さんの気が進まなければ、あえて詳しい状況などは聞かないようにしています。その状況によるストレスが心身にどんな影響を与えているのか、感じた症状を中心に聞き、自分の不調に気づいてもらえるようにしています。例えば、義父母から孫の話をされるたびに息苦しくなるとか、友達が出産したと聞くと、おなかが痛くなるとか、繊細な女性の体はいろいろなストレスを感じると身体症状がおこりやすいのです。妊娠・出産というのは、人生最大の身体的ストレスとも言えますから、どんとした土台をつくっておかないと、その後に来る子育てというたいへんな仕事をこなすことはできません。産科の不妊治療と並行して受診される場合も多いですし、いったん不妊治療はお休みして漢方で元気になろうという方もいらっしゃいます。漢方治療は、その方が自分で考えた人生なら、それに寄り添っていこうという姿勢で行います。ひとを好きになるのに年齢制限はないのと同じく、子供を欲しくなる気持ちにもある程度までは年齢制限はありません。実際、私の外来にも40歳代で結婚して妊娠を希望され、出産した人もいます。
Aさんは、39歳の女性です。結婚して5年たちますが、子どもができないため、産科で不妊治療中でした。排卵誘発剤を投与されたところ、ひどいめまいと頭痛が出現し、日常生活にも支障を来したため、いったん不妊治療を中止し、漢方外来を受診しました。手足の冷えがひどく、気血の巡りが非常に悪かったため、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)エキスを処方し、頭痛時の頓服(とんぷく)として呉茱萸湯(ごしゅゆとう)エキスを処方したところ、服用して2日で頭痛とめまいが消失しました。その後も漢方薬の服用を継続し、1年後に自然妊娠し、自然分娩しました。
すべての方がこのように妊娠できるとは限らないのですが、心にも体にも余裕ができると妊娠しやすくなることは確かだと思います。漢方では体調や心の状態に余裕をつくる治療を心がけているのです。具体的なお話はまた別の回にしたいと思います。
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- プロフィール
- 小川恵子(おがわ けいこ)
- 愛知県名古屋市生まれ
- 金沢大学附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 和漢診療外来 特任准教授
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コメント
漢方成分の催奇形性は確認されているのでしょうか?