日野原重明の100歳からの人生

2012年6月13日

下肢の浮腫について

 青年期を過ぎると、よく下肢がむくむ現象が起こることがある。この下肢のむくみを、学名では起立性浮腫という。

日中立っていることで、夕方に脚のむくみ…健康人でも

 動物は日中も夜も這った状態でいる。すなわちうつ伏せの状態でいるので、血液やリンパ液の循環は非常に合理的に行われる。しかし、人間は同じ哺乳類の脊椎動物でありながら、昼間は立位をとって働いているので、血液やリンパ液の循環には不都合なことが起こり、午後になると下腿が腫れることはよくあることである。這っていると下肢の静脈血は容易に心臓に戻るのである。しかし、立ち上がると足首には心臓からの高さの分だけ圧力がかかり、その圧力に抗して静脈血を心臓に還流させなければならないのである。これは青少年にはできるが、成人になると健康人でも夕方になると脚がむくむという現象が起こるからである。

 飲酒後の浮腫は、アルコールのために末梢毛細血管壁の透過性が亢進し、抗利尿ホルモンが抑制されて尿量が増え、喉が渇くため水がほしくなり、夜間のトイレでの尿量が増す。しかし、結果的にはからだがむくむことになる。そのため、翌朝、顔や手足に浮腫を感じる。これを二日酔いといっている。午後には浮腫は徐々に調整される。

静脈血を心臓に戻すのに、脚のポンプ作用が重要

 心臓から動脈中に駆出される動脈血は、毛細血管を経て静脈系に入るが、人は歩くことにより下肢の腓腹筋(ふくらはぎ)を使って起立時に足首の静脈圧は120cm H2Oとなるが、下肢を前に踏み出して歩くと、静脈圧は一気に40cm H2O に低下する。したがって、皮下組織にたまっている過剰な水分を排除するには、静脈の機能を活性化させることが重要となる。起立性低血圧症の人では血液が起立で下がるので、下肢に浮腫を起こしやすくなる。

 一般に、高齢者はあまり歩かないので筋肉のポンプ作用が低下し、さらに皮膚緊張度も下がるので、強い下肢浮腫を見ることが多く、これは廃用性浮腫とも呼んでいる。これは一応、健康に見える成人についていえることであるが、心臓病をもつ心不全のある人は心性浮腫、腎臓病によるものは腎性浮腫、肝臓病の人は肝性浮腫などの病名がついている。

浮腫取るには…下肢上げて睡眠、リンパマッサージを

 最初に述べたような日常の浮腫は、浮腫液が体下部、とくに下肢に移動するので、下肢を上げて寝たり、下肢のマッサージ(リンパマッサージ)をすると浮腫がとれる。昼間でも座位のときは両下肢を椅子の上に伸ばしておくとか、腫れた下肢を膝で組んで上におくと浮腫が軽くなる。欧米人はよくステージ上でも下肢を組みリラックスした姿勢をとっている。

弾力性のある靴下着用も効果

 下肢の腫れやすい人は、弾力性のある長めの靴下を日常はいていると、よい効果を示す。しかし、何よりも勤務の休憩時間には少し廊下や階段を歩くなどすると、上記の下肢の浮腫が軽くすむことを覚えていてほしい。

コメント

利尿剤使用の可否
[竹さん]2012年6月14日

浮腫がひどい時に利尿剤を飲んでいます。そのため脚がつることがあります。同時にカリウムも摂取しています。これらについて、ご教示の程、お願い致します。

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プロフィール
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日野原重明(ひのはら・しげあき)
誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院理事長
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