顔面神経良性腫瘍(4)ハンデ背負い 歌い続ける
2010年8月、妻の悦子さん(57)に乳がんが見つかった。
下積みの頃から支えられてきた。胸を突かれたような気がした。
「自分の歌のなかに、どうしても女房を思い出す歌詞が多々あるんですよ。歌っている時にがんのことが頭をよぎり、笑顔が作れなくなって困りました」
手術前にいっしょに病院で医師の説明を聞いた。胸のリンパ節を切除したが、乳房の大部分を温存することができた。
「手術の後、苦しい時は苦しいって言ってくれや、と言いましたが、弱音を吐かず、俺のことを気遣ってくれる。ありがたいです」
2月、新曲「こころの絆」を発売した。深く心が結びついた男女を歌った曲だ。
「右耳が腫瘍で聞こえなくなって、女房ががんになっても、絆さえちゃんとしていれば大丈夫だって。曲が持つ意味を病気が教えてくれたような気がします」
右耳の耳鳴りはやまない。顔面まひを発症する可能性も消えない。「ファンを心配させたくない」と病気について詳しく話さずにきたが、東日本大震災が襲った東北地方の公演では右耳のことをあえて話した。
「俺も、明るく上を向いて生きていますよ、と伝えたい」
右耳のハンデを背負い、これからも歌い続ける。(文・渡辺理雄、写真・鷹見安浩)
(2012年6月7日 読売新聞)
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