基調講演(2)高齢者で問題となる五つの病気…東京大学教授・大内尉義さん
日本人の平均寿命は世界トップクラスですが、少子化が進んで、高齢者の割合はますます増えていきます。韓国、シンガポール、インド、中国、こういったアジアの国々の高齢化も急速に進んできます。これから高齢化が進むアジアの中で、日本はそのお手本にならなければいけません。
お年寄りで問題となる病気というのは、せんじ詰めると次の五つです。一つは動脈硬化、これは血管の老化がもとで起こってきます。それから、がん。そして、感染症、特に肺炎ですね。それから、脳の老化などで起こる認知症、骨の老化などによる骨粗鬆症です。今日は、動脈硬化、骨粗鬆症、認知症の三つについてお話しします。
動脈硬化…脳卒中などの原因に
動脈硬化とは、血管にコレステロールがたまり、血管の内側が狭くなった状態です。コレステロールがたまってできる隆起をプラークと言いますが、これが破裂すると、中の異物が一挙に血管の中に出てきますから、ここで血液が固まるんですね。いわゆる血栓です。それで、ある程度狭くなっていた血管の内腔を完全に詰まらせてしまいます。
これが脳に起こると、脳卒中を起こします。冠動脈という心臓を養っている血管にこのような変化が起こりますと、狭心症とか心筋梗塞。足を養っている血管に起こりますと、閉塞性動脈硬化症が起こります。歩くと足が痛くなって、歩けなくなる。詰まる場所が違うのでそれぞれ症状が異なるのですが、もとをただせば同じことです。
お年寄りの寝たきりの一番大きな原因は、脳血管障害です。それから、二番目は高齢による衰弱、三番目は骨折・転倒ですね。四番目が認知症、この四つでほとんどの原因を占めてしまいます。動脈硬化の危険因子は、高血圧、糖尿病、肥満、たばこ、高コレステロールなどです。女性であれば閉経後であることも、動脈硬化を進める要因となります。
骨粗鬆症…転倒・骨折から、寝たきりにも
次は骨粗鬆症です。骨粗鬆症というのは、骨がもろくなって、骨折の危険が高まる病気です。骨粗鬆症は、女性に圧倒的に多い病気です。男性は60歳ぐらいから少しずつ出てくるんですが、女性は閉経とともに、50歳前後ぐらいから増えてきて、大体、男性の4倍から5倍ぐらい多い。なぜ女性に多いかというと、二つ理由があります。一つは、若いころの骨の量が男性と比べて少ないことです。これが高ければ高いほど、骨粗鬆症になりにくい。貯金みたいなものですね。それから、女性は閉経とともに骨量が急速に減ってきます。男性はそういう現象がないものですから、ゆっくりと減ってくる。この二つが女性に多い理由です。
骨粗鬆症を防ぐにはどうしたらいいか。答えは二つです。一つは、若いころから、骨が丈夫になるよう、骨の貯金をしておく。特に女性は、しっかり運動をし、カルシウム、ビタミンD、そしてビタミンKもちゃんととることが大切です。
二つ目は、高齢になっても、骨が減るスピードを小さくして、骨粗鬆症になりにくくすることです。食塩やリンの過剰摂取は骨によくないです。食塩は血圧にもよくないですけど、骨にもよくないですね。それから、運動不足、日照不足、たばこ、過度の飲酒、コーヒー、こういった生活習慣を改めることで、骨を減らすスピードを減らすことができます。
骨折・転倒は寝たきりの原因の第3位です。どこの骨折が起こったら寝たきりになるかというと、圧倒的に大腿骨の頸部(つけ根)ですね。これを大腿骨頸部骨折と言います。転ぶことで骨折が起こりますから、転ぶというのが非常に怖い。原因の一番は、筋力の低下です。それから、お薬も要注意で、転びやすくなるお薬ってあるんですね。これは大体、神経に効くお薬だと思ってください。睡眠薬、精神安定剤、抗不安薬、抗うつ薬、こういった脳に効くお薬が転倒を非常に起こしやすいので、私たちは、特に75歳を超えた患者さんにこういったお薬を処方するときには、慎重に処方しています。
結局、こういったいろんな要因が重なって転び、骨折を起こすと寝たきりになるんですが、一度転ぶと、転倒恐怖というのが起こって、外に出るのが嫌になってくるんですね。そうすると、ますます筋肉の低下が進んでくる。こういう悪循環に陥ります。これをどこかで断ち切る必要があるわけですね。(続く)
(2012年6月5日 読売新聞)
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