Dr.北村の「性」の診察室ブログ
2012年6月1日
電話相談員の悩みは「無言」と「イタズラ」

本年4月から、社団法人あらため一般社団法人日本家族計画協会となった僕の職場。毎年、この時期になると所属している家族計画研究センターでは、一年間の事業報告をまとめて公表するのが慣例となっています。
「思春期・FP(家族計画)ホットライン」「OC(経口避妊薬)サポートコール」「OCコール」「東京都・不妊ホットライン」「東京都・女性のための健康ホットライン」など昨年度一年間に受けた相談は11,927件。電話相談は一年間に243日稼働していますので、一日に49件を超える電話相談を受けている計算になります。今回は、「思春期・FPホットライン」に注目。実際に受けた相談ではなく、「無言」と「イタズラ」に目を向けてみましょう。
月曜日から金曜日の10時から16時まで開設している『思春期・FPホットライン』(03-3235-2638)には、男性からの相談が1,321件、女性から1,260件寄せられています。その一方で、「無言」が1,310件、「イタズラ」が537件。16時から翌日の10時までの「留守番電話」の件数を数えると1,389件ですから、たった一台の電話に6千件近くのアクセスがなされていることになります。
相談員が女性であることを承知の上なのでしょうか、男性からの相談の多くは深刻さに欠けているように思えて仕方ありません。相手の顔が見えない電話相談という場でも女性相談員を相手に「テメエ、なめるんじゃないぞ」などとうそぶいている男性の声を聞くと滑稽さを超えて悲しくなります。男性である僕が集中して電話を受ける試みをした日など、相談件数が激減するというのも興味深い現象です。
言葉と雰囲気でしか相手の様子をうかがい知ることのできない電話相談ですから、受け答えが続いている間はいいのですが、「無言」となると手も足も出ません。いったい、「無言」は私たちにどのようなメッセージを送っているのでしょうか。「無言」をもって単に嫌がらせと判断するのは早計で、電話をかけてくる者が、語りたいけれども語れないこころの揺れや、大人達と真剣に話す機会を逸しているために、こちら側の真面目な応対に戸惑い受話器を置くなど、いろいろな事例があるに違いありません。
「女性の相談員はいませんか」と問いかけ、男性相談員を拒否し、女性相談員相手に男性自身の問題である性器やマスターベーションについて矢継ぎ早に話し始める姿など、同性とは真っ向から向かい合うことのできない場面も多く、その自信のなさが無言という形に現れているのかも知れません。このような場合、「きちんと話せるようになったらもう一度電話をかけ直してください」とか「質問をメモにしておいてね」と返すようにしています。
真面目な応対を心掛けている相談員にとって何とも意欲をそがれるのが「イタズラ」です。電話を使っての「イタズラ」は、最近とみに増えています。確かに顔も見えなければ、電話をどこでかけているかもわからないわけですから、このような「イタズラ」の横行を止めることはできません。まさに電話が凶器にもなり得る由縁です。
「もしもし」を何度も繰り返し続けるだけの相談者。明らかに受話器の向こうではマスタ-べ-ションをしている様子が伝わってきたりと、苛立ちは尽きません。明らかに中年を思わせる声の常習者が、次々に年齢を変えて、多彩な相談を向けてくるというのもあります。
そんな時、「ここは真剣に悩んでいる子が電話をかけてくる所なので、もしふざけているならば切っていただけないか」の声に、乱暴に受話器が置かれることもあります。「あなた何歳?あなたとセックスしたいんですけど」の声に、「電話でどうやってセックスするっていうの」と相談員。「あなたの下着何色?」に「顔も見たこともないあなたに、私のプライベ-トなことを話すことなんてできません」。
「イタズラ」電話の対処法が相談員の重要な仕事にもなっています。
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- プロフィール
- 北村邦夫(きたむら・くにお)
- 自治医科大学医学部卒業後、産婦人科医として保健所など衛生行政の分野で実績を積み、1988年から日本家族計画協会クリニック所長。
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コメント
ハートネットTVを観てよりそいホットラインのことを知りました。
なかなか繫がらずに、諦め掛けた時に初めて繫がって、親身になって、話を聞いて下さった、女性相談員サン。
「今は泣いて良いのよ!!」嬉しかったです。
無言でも、明らかに話しづらいという感じと、ただこちらの様子をうかがうような感じの時と。
いろいろだと思います。
特に相手の吐息などで何を目的にして電話をかけてきているか判る時もあるでしょう。
困っている人にこの電話のラインをあけて下さいという場合もあるでしょうね。
やはり電話担当の方だけでの対応は難しいかと。
電話のそばに、責任者等がいたり、会話の内容を複数の人できいてあげたりと工夫が必要かもしれないですね。
ショック直後では話す相談者もすごくメンタルになっているし。
ひとりでかかえ込まないのは、相談者も相談を聞く側も同じでしょう。
今後の応対の推移を見守りたい気持ちです。
思春期ホットラインではありませんが電話相談した事のある女性です。レイプ被害者で、電話ででも、話すのが難しかったです。
その経験から、「きちんと話せるようになったらもう一度電話をかけ直してください」は、やめて欲しいな、と言うのが実感です。
トラウマで、話したくても話せないのが症状なので、そういう言葉を聞くと、きちんと話せるようになるまで相談を受けてくれないのだ、私は助けてもらえない人なんだ、ともっとネガティブになってしまいます。
私にとっては、何も喋れないときでも、電話の向こうに誰かいて、守ってくれていると言う安心感が一番大切だったです。
「つらかったんですね、まだ言葉にならないなら話さないでもいいんですよ、私はここにいますから」と言ってくれた相談員に感謝しています。それを言ってくれた、その人とは、話せました。
「今後の対策さん」の「ナンバーディズプレイ」や「録音」はやめて欲しいです。相談したい人が電話かけられなくなってしまいます。
電話相談に応じてくださっている皆様、本当にご苦労さまです。
誠意ある皆様の姿勢を踏みにじる事態ですね。
今後の方針として以下の対応をご一考ください。
このような時代の中においては至極当たり前の項目ばかりだと思います。
1)ナンバーディスプレーにして、番号非通知は着信拒否とする。
2)悪質な相手番号は警察へ通報する。
3)せめて一回の通話で100円加算する。ボランティアというのはおかしい。
4)本人の承諾の下、全通話録音しておく。
先日、読売新聞電子版で「よりそいホットライン」さんの疲弊が報じられていました。
各電話相談、みな同じような負担を抱えているのですね。
性的マイノリティーやメンタル疾患の当事者としても、いたずらやセクハラ目的での通話は辞めてほしいものです。