恐山菩提寺の院代・南直哉さんインタビュー全文(2)骨をうずめる修行道場ない

住職の養成、第一に考える組織体制に疑問

 ――修行の場に、永平寺を選んだのはなぜですか。

 「道元禅師が開いた寺。それだけです。ほかの寺のことは一切考えませんでした」

 ――出家してからの生活はどうでしたか。

 「最初の5年で永平寺の修行体系の強さともろさ、プラスとマイナスがはっきり見えてきました。特に私が批判的なのは、永平寺に限らないのですが、伝統的な教団のほとんどが、住職の養成を第一に考える組織体制になっていることです」

 「住職というのは、僧侶になった結果としてそうなることもあり得るというのが本来の姿であり、住職になるために出家するのではない。僧侶になると言うことはどういうことか、どういう僧侶を作るかという基本理念で、今の永平寺の教団も、修行も成り立っていないのが問題です」

 ――つまり、住職になるための一時的な修行の場という意味が強いということですか。

 「端的に言うと、骨をうずめる修行道場がない。普通の修行僧が修行道場で死ねることを前提に組織を作っていない。長くても5~6年いれば十分だということです。少なくとも永平寺はそうです。そう長い修行を考えていない者が大半なのに、私は『永平寺で死にたい』と言い、5年、10年と居続ける。修行については厳格で、永平寺で定められている修行を全く妥協せずに貫徹しようとしたため、『原理主義者』とも呼ばれました。後輩たちには随分と怖がられました」

居心地良い環境飛び出し、恐山との縁が生まれる

 ――永平寺を出る決心をしたのは。

 「永平寺は居心地が良かったです。人が悩むのは人間関係であり、多くはお金、異性、地位名誉ということに集約されると思います。永平寺の中では、世間ほど複雑なことは起きませんでした。ただ、このまま居続けていてはダメになるのではないかという疑念もわき上がってきました。思い切って、この居心地の良い環境から飛び出さねばならない、と考えるようにもなりました。入門から15年以上過ぎ、2002年に道元禅師の750回忌があることから、これを区切りに03年には山を下りようと腹を決めました」

 「この間、後に妻となる恐山菩提寺の住職の長女との出会いにも背中を押されました。ある人の紹介で知り合ったのですが、出会いから8年たっていました。恐山との縁が生まれました」

 ――初めて恐山を目にした時、どう感じましたか。

 「ゴツゴツした岩場からモクモクと煙が吹き出す光景など、目の前に広がる光景は異様な雰囲気でした。でも、なぜこのようなものが必要なのかが分からない。参拝者に説教をする立場になり、恐山を語る言葉を持てず、居心地の悪さというか、嫌な感覚が続いていました」(続く)

2012年6月1日 読売新聞)

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