Dr.北村の「性」の診察室ブログ
2012年5月25日
僕の次の夢は経口中絶薬を日本に

たまたまの出来事といってしまえば、それまでですが、1999年6月に低用量経口避妊薬が承認されたときも、2011年2月に緊急避妊薬が承認されたときも、何となく渦中にいて、狂喜乱舞したことが今も懐かしく思い出されます。
日本人女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)を向上させるために、次にどうしても必要なのが経口中絶薬です。そんな物騒なと言わないでください。物騒なのは、わが国が依然として手術に頼っていることにあるのですから。
妊娠初期(妊娠12週未満)に行われる人工妊娠中絶の実際をご紹介しましょう。(日本家族計画協会:「新・受胎調節指導用テキスト」から)
(1) 子宮頸管を拡張する。
(2) 麻酔(静脈麻酔が一般的。その他、腰椎麻酔、陰部神経ブロック)
(3) 金属製頸管拡張器(へガール)により、子宮頸管をさらに拡張。
(4) 子宮内容の除去。胎盤鉗子(注1)、キュレット(注2)、吸引器(注3)などが用いられる。必要に応じて子宮収縮剤の投与。
(5) 子宮内容物の確認。脱落膜、絨(じゅう)毛、胞状奇胎、胎児の有無。週数相当の内容であるかを確認。問題があれば病理検査を行う。
(6) 数時間のベッド上安静。状態によっては入院が必要。
(7) 診察終了後帰宅し、自宅安静。発熱、出血、腹痛などに注意。
(8) 術後5~7日に外来受診。
(9) 家族計画・避妊指導(避妊に失敗した原因を検討して、適切な方法を指導。できればパートナーとともに行うことが望ましい。
注1) 胎盤鉗子: 子宮内容物を挟んで除去する器具。
注2) キュレット: 子宮壁から子宮内容物をはがす器具。先端がスプーンのようになっている。
注3) 吸引器: 吸引管を子宮腔内に挿入し、陰圧をかけて子宮内容を吸い出す。最後にキュレットで遺残がないかを確認する。
世界でも極めて稀な器械的な中絶手術が行われていますが、日本の産婦人科仲間が手術だけでなくその後の避妊指導にまで尽力していることは、ここに挙げた人工妊娠中絶の実際をご覧いただくだけでもおわかりいただけることと思われます。しかし、世界では、器械的方法によらないより安全な経口中絶薬を用いた方法が広く用いられているのです。
この経口中絶薬とは、生殖過程に重要な役割を果たす黄体ホルモン(プロゲステロン)に拮抗する薬剤でRU486と呼ばれています。RU486はプロゲステロンの作用を阻止することによって子宮内膜に働き内膜を剥離し月経様の出血を起こすものです。その際、子宮頸管を軟化させ子宮収縮を促すためにプロスタグランディンE1という生理活性物質を併用することで中絶をより確実なものとし、完全流産率は95%を超えると言われています。
わが国での経験がありませんので、米国でどう扱われているかをみると、妊娠の49日までの使用が承認されていて、第1日目にRU486を、その2日後すなわち第3日目にプロスタグランディンE1を経口投与する方法がとられています。妊娠が中断したかどうかの確認のためには第14日目に受診してもらい、仮に中絶が不完全であれば吸引法などの器械的措置をとるよう勧めています。米国の場合、49日を超えた場合には吸引法が主として使われていますが、妊娠12週以降の中期中絶では吸引法から子宮内容除去術(薬物療法と外科療法)への切り替えが行われるのが一般的です。
わが国でも経口中絶薬RU486が話題になったことがあります。これをインターネットなどで個人的に輸入した女性に生命を脅かすほどの健康被害の報告が相次いだことから、2004年10月に厚生労働省は医師の処方箋または指示書に基づく場合以外を付加とする「個人輸入制限」を決定しています。
(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1025-5.html)
しかし、インターネットで検索すると「中絶薬・堕胎薬のネットショップ」などというサイトが目につきます。中絶を大っぴらにしたいと考える女性は皆無でしょう。だから、危険を承知でインターネット販売に飛びつくのです。これでは、新たな被害者を生み出すことになりかねません。医師のもと、安全で有効な経口中絶薬を使える日が来ることを願っています。その承認の日に狂喜乱舞するためにも、経口中絶薬導入に向けた戦いの狼煙(のろし)を上げようと心に決めています。
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- プロフィール
- 北村邦夫(きたむら・くにお)
- 自治医科大学医学部卒業後、産婦人科医として保健所など衛生行政の分野で実績を積み、1988年から日本家族計画協会クリニック所長。
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コメント
私の叔母は子供が産めない体でした。電話口で大泣きしている声が私の耳にも届くほどでした。
経口避妊薬を使うことで、いつでも自分は産むことが出来る、と思う人が出てくるのではないでしょうか。蓋を開けてみたら、実は自分は産めない体だった、という事がわかる。
子供を産めない人がいることはとても大切なことだと、私は思います。悲しみを知らない人が増えたら、恐ろしい時代になると思うのです。
やはり、避妊はコンドームを使うべきです。AVなどで、「中出し」が、当たり前と考えている男がかなりいるのではないでしょうか。育てる気持ちが無いなら、コンドームをするべきで、経口避妊薬に頼るべきではないと、私は考えます。そうでないならば、いつでも中出しが出来るわけで、子供はセックス以下の存在になってしまう。
事実、不妊治療を止めたら、つまり、諦めたら妊娠した、という話は芸能界でも聞く話です。命は授かりものと考えるのが、最善だと思います。産めない人は、その悲しみを伝えて、産むことの幸せを教えるべきだと思います。
経口避妊薬でさえ医師の指導を受けずに個人輸入に頼っている女性もいますし
ここは危険性と医師の指導の下での使用の安全性を広めていただきたいです。
自分の周期も把握していない女性が安易に使うものではなく、医師の指導からECからOCのように確実な避妊に
繋がるような流れが出来ていくといいと思います。
先生のご活躍、楽しみにしております。
現行の中絶方法は、医師の技量不足や不注意で子宮に回復不可能な損傷を与えて、不妊症にする危険が有ると言われてきました。
経口薬で中絶出来れば、医源性不妊症の発生率を下げる事が出来るのではないかと以前から考えていました。
経口薬には経口薬特有の事故や問題もあるとは思いますが、麻酔事故や大量出血事故等の危険が無い分だけ良いと思います。
現行の中絶法方法の最大の利点は、機材が無いと実施できないので実施可能な場所が限られる点と子宮外妊娠の見落としがほぼ無い点の2点だけだと思っています。
素人の意見ですが、他に何か議論すべき点があるのでしょうか。
風紀の乱れなどの議論は別の問題だと思っています。