石井苗子の健康術
2012年5月22日
こえだめに落ちた時のメンタリティ

(こえだめは大げさですが、医療支援車ごと肥料置き場にハマりました)
以前にここに書きました「置きオカズ箱」を50世帯に2日間で配達することになり、2台のペ・ヨンジュン号で走り回る計画を立てました。
ところが、初日の最初の家に行く道すがら、私の医療支援車が方向転換をした途端、後ろ向きに畑の肥料置き場に落ちてしまったのです。
後輪が沼のような所にハマり、運転手さんと私で押したり引いたりしていても、ズブズブと車体ごと沈んでいくのです。
動物の排泄物と野菜などが混ぜ合わさった土を、膝までつかりながら手ですくい上げ、その辺に落ちている板を拾ってきてはタイヤの下に敷きエンジンをかけるのですが、どんどん沈んでいくのです。あたりは水田、土曜日だからか、人ひとり歩いていません。
20箱のオカズ箱を一個ずつ、あぜ道に降ろすことで沈むのを食い止めようとしましたが、全部降ろしても車体が浮いてこない。
携帯電話で他方のぺ・ヨンジュン号にSOSを出したものの、これではスケジュールが全部遅れてしまいます。配達するはずだった家にも電話で事情を話しながらお詫びです。途方に暮れました。
自分がどこにいるのかすらわからないまま、配達はどうなるのか。肥料畑に膝まで浸かりながら頭が真っ白になってきたころ、陽炎のような景色の向こうから、点のような物が見え始め、次第に姿を現したのが、小さなトラックを運転しているお爺さんの車でした。
「どしただ?」
「あ、間違って落ちてしまって」
「引き上げてあげるだよ」
私の医療支援車を運転してくださっていた人は、「きぼうときずな」のボランティア活動のためにアルバイトで来てくださった62歳の男性でした。
この方が自分の失敗を気にされていたのか、ワイヤーで引っ張ってくださったそのおじいさんの手に思わず「これでタバコでも買ってください」とお札を握らせようとしたのです。
「なに言ってんだ~ええてってそんな、それよりどこ行こうとしてんだ? ここらカーナビでは出ないよ?」と、親切に道案内をして下さり、感激している私を振り返って「あんた、池でまず手を洗ってきなさい」と、水田の隅を指しながらほほ笑んで下さった。
農作業の工具を洗う池に降りて、しゃがんだ瞬間、カエルが2匹ほど池に飛び込み、澄んだ水で泥だらけの手首を洗いながら、思わず涙が出ました。人の温かさに触れたのは久しぶりでした。
おじいさんとお別れをし、オカズ箱を車内に戻していると、降ろすときより2倍以上重く感じました。
「人間、気の持ちようですな?」と、運転手の方と顔見合わせ笑いました。火事場の馬鹿力ではないですが、降ろすときは軽く思えたのでしょう。
オカズ箱を全部車に戻す時には、ひとつひとつがすごく重く感じました。
神様、ありがとうございました。人生の思い出になりました。まだまだ私も、必死になれば働けると思います。
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
編集方針はこちら。
<編集方針>
投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。
コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。
次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。
- 当ブログとの関係が認められない場合
- 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
- 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
- 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
- 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
- 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
- 事実に反した情報を公開している場合
- 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
- メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
- その他、編集スタッフが不適切と判断した場合
以上、あらかじめ、ご了承ください。

コメント