ミチコさんの人“性”塾
2012年5月14日
与謝野晶子の陣痛所感 「男が憎い」

情熱の歌人与謝野晶子は11人の子どもを生みましたが、彼女にとって妊娠・陣痛はどのようなものだったのでしょうか。
妊娠のわずらわしさ、産の苦しみ、男の人にはとうていわかるものではない。女は恋をするにも命がけである。よし男が、たまたま恋のために命がけであっても、産という命がけの事件には何の役にも立たない。
国家が大切だとか、学問や戦争や、それがどうのといっても、女が人間を産むという、この大役に優るものはない。男の手で作られた経文や道徳や国法では、罪障の深いもの、それはすなわち女、劣っているもの、弱いもの、それが女であると取り扱われている。一体どういうことだろう。
釈迦やキリストなどの聖人をはじめ、歴史上の碩学、英雄を、女は無数に産んだ。いかなる罪障や欠点があるというのだろうか。
私は産気づいて、激しい陣痛が襲ってくるたびに、正直にいえば、いつも男が憎い。妻がこれほど苦しんで、生死の境を、脂汗かいて骨が砕ける呻いているのに、夫は何の役にも助けにもならない。
私の味方になれる男は、世界のなかで誰もいない。日ごろの恋も情愛も、一切女を裏切るための覆面だったのか、こう思いつめると、ただもう男が憎い。
しかし子どもが、産まれ出て、女というものの役目をみごとに果たした、
すべての人たちはこうやって産れた、その時になると、この上もない喜びに心も体もとけていく。男の憎いことなどは、産が済んだ一刹那に忘れてしまう。
・・・男も女も、同じく人である。子を産むから穢らわしい、戦いに出るから尊いというような、偏った考えを持たぬようにしたい。
富国強兵、男尊女卑時代にあって、晶子の陣痛所感は、やはり「さすがー」の観を深くさせるものがあります。
※ 与謝野晶子(1878~1942)大阪の生まれ。歌人。与謝野鉄幹と出会って熱烈な恋愛に陥り、家を捨てて上京し、結婚。婦人問題や感想集、詩集、童話など多彩多量の著作がある。
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- 高柳美知子(たかやなぎ・みちこ)
- 1931(昭和6)年、東京生まれ。中学・高校の国語教師などを経て、現在は“人間と性”教育研究所所長。
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