「口腔ケア」で食事楽しく
顔や舌の体操も効果的
年を重ねても食べるのを楽しむには、歯や歯ぐき、舌をきれいにする「
東京都江戸川区の介護付き有料老人ホーム「みどりの里江戸川」に毎週水曜、歯科医と歯科衛生士が訪れ、診療と口腔ケアを行っている。「ここはガーゼを指に巻いて、丁寧に汚れを拭き取ってください」。日々、入所者のケアにあたる介護士に、衛生士が細かく指示する。
ホーム開設から訪問診療を担当している、歯科医の細田ひとみさんは「要介護者は自分で歯を磨くのが難しく、感覚が鈍り、口の不調も訴えにくい。虫歯や歯周病、入れ歯が合わないといったトラブルを放っておくと、食欲が落ち、会話も減って、ふさぎ込みがちになる」と話す。
一方、入所時に自分の口では食べられなかった人が、口腔ケアとリハビリを重ね、固形物を食べられるようになった例もある。「食べ物をかむことで、少しずつ体力も回復していきました」と同ホームのケアマネジャー。
介護予防の観点から、行政も口腔ケアに力を入れる。
埼玉県川口市内の公民館で4月、介護予防教室の一つとして、口腔機能向上を図る講習会が開かれた。65歳以上で、口が渇きやすい、食べ物をのみこみにくい、飲食時にむせやすい、といった自覚のある市民が受講した。
全6回のうち2回目の今回は「口腔清掃の重要性」がテーマ。衛生士が、歯ブラシや、ブラシ部分にスポンジの付いた「スポンジブラシ」の使い方を指導する。「舌の汚れも、スポンジでやさしくかき出すようにして落としましょう」。受講した遠藤節子さん(76)は「スポンジブラシを使うと、思った以上に口の中がさっぱりした。歯ブラシといっしょに使い続けたい」と話す。
この講習会などに衛生士を派遣しているデンタルサポート社(千葉市)は「口腔ケア用のスポンジブラシや舌ブラシは、ドラッグストアやスーパーの介護用品売り場などで入手できるので、試してみては」と呼びかけている。
口腔ケアを続けると、口内の細菌が肺に入って起こる「
東京医科歯科大教授(口腔疾患予防学)の品田佳世子さんは、口内や入れ歯の汚れをとり除くとともに、顔と舌の体操や、唾液腺のマッサージを行うよう勧める=イラスト参照=。起床後に唇やほおを動かして筋肉や神経を目覚めさせる。食前には舌や唾液腺を刺激して唾液を増やし、口の中をきれいにするといった効果がある。
品田さんらの研究グループが、68~81歳の女性79人に3か月間、これらを試してもらったところ、唇や舌を動かす機能が明らかに高まり、口内の食べかすや舌の汚れも減ったという。「毎日続けることが大事。50代から始めて習慣づけると長続きしやすい」と、品田さんは話している。
| 口腔ケアのポイント |
|---|
| ・本人がケアするのが基本だが、必要に応じて家族らが手助けを ・歯ブラシの硬さは「ふつう」か「やわらかめ」を選び、1か月程度で取り換える ・歯ぐきがやせて出てきた歯の根元部分は虫歯になりやすいため、フッ素入り歯磨き剤で入念にブラッシング ・総入れ歯は洗浄剤に頼りすぎず、1日1回はブラシで汚れを落とす ・日ごろのケアに加え、少なくとも半年に1度は歯科医院で状態を見てもらう (細田さん、品田さんの話をもとに作成) |
(2012年5月11日 読売新聞)
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