父のカッコよさ、今は分かる
僕も40代になり、次の世代に何をどう伝えていくべきか、考える時があります。難しいテーマですね。
今月から舞台で演じるシェフも、そんな悩みを抱える一人。父親から受け継いだレストランを、今度は自分がバトンタッチしなければならないのだけど、彼は後輩の前では全く料理をしてみせない。時代が変わり、自分が理想としてきた料理が世間に受け入れられない現実の前で迷っている。経験を積むほど迷いは大きくなる気がします。
そんな、受け継いでいくことの難しさを考える時、思い出すのが自分の父親です。僕は父から直接何かを教えられた記憶がない。僕が18歳の時に他界したせいもありますが、もともと言葉に表すタイプではありませんでした。思い出すのは、台所で食器を洗っている背中や、祖父の前で酔っぱらっておどけている姿。他人に立派だと言われるより喜んでもらった方がいい、という人でした。そんな父を、僕はカッコいいとは思えなかった。
でも、自分が大人になると、不平不満や弱音を冗談以外では言わなかった父の強さ、大きさがわかる。無意識にそうあろうとし、父から多くを受け継いでいる自分に気づきます。カッコいい父親だったと今は思います。
娘たちは中学生と小学生。世代のギャップに戸惑うことも多いけど、人生で大切なことを、僕も彼女たちの中に残したいと考えています。(聞き手・梅崎正直、写真・高橋美帆)
俳優。1965年生まれ。85年デビュー。舞台「ハンドダウンキッチン」(12日から、東京・渋谷区のパルコ劇場)に主演。
(2012年5月8日 読売新聞)
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