吃音ドクター・菊池良和さんインタビュー全文(4)「どもってもいい」胸はって言える社会に
長男誕生直後に、脳出血で倒れる
――2008年秋、脳出血で倒れたそうですね。
「長男が誕生して18日目のことでした。自宅で突然、起きあがれなくなったのです。右半身が動かない。すぐに妻が救急車を呼んでくれました」
――冷静な対応でしたね
「実は、研究をしている時に、私の脳の画像もとりました。研究に協力していただいた人は、幸い、何の異常も見つかりませんでしたが、私の画像からは、脳動静脈奇形という異常が見つかりました。放置すれば1年で1%が破裂し、脳出血を起こすものです。専門病院で治療を受けましたけれど、残念なことに、その3か月後に、脳出血が起きました。だから、異変が起きた時に、ああ、破裂したなとわかったのです。妻も取り乱すこともなかったので、大変感謝しています」
――リハビリはつらかったでしょうか
「リハビリ専門病院には4か月入院しました。今も右足は装具が必要です。車や自転車は使えなくなりました。足をひきずる形で歩きますけれど、つえなしで歩けます。症状が落ち着いて手術をしたことで、話せるようにもなりました」
完璧ではないが大丈夫…吃音と付き合ったからこそ思えた
――吃音もひどくなったそうですね。
「一時は、すべての言葉でどもるようになりましたが、無事に職場に復帰できました。その時には、どもりを隠そうとは思わず、どもってもいいから相手に伝えたいことを伝えるのが大事、とわかっていたので、とにかく、生まれたばかりの子どもと家族3人で暮らせれば、と必死で働きました。完璧ではないけれど大丈夫と思えたのは、吃音との長年の付き合いがあったからでしょうね。当時のカルテを見直すと、本当に汚い字です。でも、日々、カルテを書いて手を使うことで、書く機能が回復していきました」
――昨年、著書「ボクは吃音ドクターです。」を出版されましたが、反響はいかがですか。
「吃音に一人で悩む多くの人から反響がありました。もう1年たったけれど、今も週に1人は新たな相談メールが届きます。私が深い悩みを抱えていた思春期の吃音者からも届きます。昔と違って、携帯電話やメールが普及して、それこそデジカメにより、写真の現像を頼まなくても済むなど吃音者にとって環境は良くなりました。でも、悩みの根本は変わりません。私がそうだったように、吃音という苦悩を共感し、理解してくれる存在が大切です。親でも、友人でも、医療者でもいい。吃音をオープンに話せる、どもってもいい、と胸をはって言えるような社会になってほしいと思います」(終わり)
(2012年4月29日 読売新聞)
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