吃音ドクター・菊池良和さんインタビュー全文(2)仲間と出会い、悩み軽く
――医学生の時に、吃音があると周囲に公表しました。何がきっかけでしたか?
「3年生になる春に、言友会という吃音者の自助グループに参加しました。自分と同じような悩みを持つ人が、果たして本当にいるのか確かめたかったのです。参加してみると、これまでの自分の長く苦しい道のり、必死に吃音を隠そうとした様々な体験を、同じ苦悩を持つ仲間が、『ああ、わかるよ』『自分もそうだった』と共感してくれたのです。それだけで、ずいぶん悩みが軽くなりました」
――思いがけない気付きもあったようですね。
「はい。今思えばおかしい話ですが、ずっと吃音さえなければ、流暢に話せれば、もっと上手に人と付き合える、と思い込んでいました。でも、吃音者だけの集いで、吃音を気にせずに自由に話してみて、大切なのは、どもる、どもらないではない、話す中身を持つことなんだ、と気付いたのです。吃音が苦ではなくなりました」
――医師として患者と接する不安はありましたか。
「もちろん、最初は、吃音のせいで、信頼されなかったらという不安はありました。でも、それも、冷静に考えれば、患者は、医師に、適切な診断と治療を求めているわけです。どもっても、ちゃんと納得いく説明をすればいいんだ、と思うと、そう不安はなくなりました」
隠さないことで、多くの人に助けられる
――周囲にも隠さなかったのですよね。
「はい、隠さないことで、多くの人に助けてもらいました。たとえば、診察室からインターホンで、待合室の患者を呼びますよね。そういう時は無理をせず、看護師に頼んで代わりに呼んでもらいました。隠さずどもりながらも、堂々と話すことで、吃音をバカにされたり、笑われたりと言うことはありませんでした」
――それでも、つらいと思うことはありましたか。
「そう行き詰まったことはありません。私がどもりながらも医師として仕事をしていることが、吃音で悩む多くの人の励みになるという思いが、私を奮い立たせているのでしょう」
「ただ、現実には、吃音があるという理由で面接がうまくいかず就職に苦労する人も少なからずいます。米国では2008年、障害者に関する法律が改正され、吃音とその関連する発声障害は、保護の対象となりました。不当な解雇などは、この法律が後ろ盾となります。ドイツでも、重度の吃音は障害者の認定を受けられます。日本でも、吃音者を保護する法律が必要だと思います」(続く)
(2012年4月27日 読売新聞)
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