医療相談室
- Question
大震災後からめまい…「内耳性めまい症」との診断
昨年の震災後,一時的にめまいを感じるようになり、いわゆる地震酔いかなと思っていたのですが、そのうちにゆらゆらと体が揺れるめまいが止まらなくなりました。すぐに脳神経外科を受診したのですが、MRI検査では異常は見られず、耳鼻科で平衡機能検査を受け、「内耳性めまい症」と診断されました。血流を増加させるジフェニドールとアデホスコーワを服用していますが、良くなりません。毎日揺れるのを足で踏ん張っている感覚で過ごしてきました。このまま治らないかもと不安になります。そもそも、内耳性めまい症とはどんな病気ですか。原因は何でしょうか。よい治療法はありますか。(35歳男性)
- Answer
「地震酔い」か…徐々に症状改善するのでは
八木聰明・日本医科大学名誉教授、人間環境大学長
「めまい」を起こす病気(原因)はどの様なものがあるのでしょうか。それには、大きく分けて二つ或いは三つが考えられます。
一つは、質問に出てくる「内耳性」または「末梢性」の「めまい」です。内耳は耳の最も深い場所に固い骨に囲まれて存在する、聴えのセンサーである蝸牛と身体のバランス(平衡)を保つためのセンサーである前庭(三半規管と耳石器)の二つの器官からなっています。
三半規管は頭の回転のセンサー(回転加速度センサー)であり、耳石器は頭の傾きなどを感じるセンサー(直線加速度センサー・重力センサー)です。これらの障害で起きる「めまい」を総称して「内耳性めまい(症)」と言います。
一方、身体のバランスは、内耳からの情報と視覚あるいは深部知覚(筋肉収縮など)情報などを脳(脳幹)で統合して、四肢の筋肉などに信号を送って保たれています。この情報の統合に関係した場所の障害でおきる「めまい」を総称して「中枢性めまい(症)」と言います。他の一つを、あえてあげれば、精神的(心理的)要素の強い「めまい」と言うことになります。
質問では、脳神経外科でMRIを含めた検査の結果、異常が発見されなかったので耳鼻咽喉科で「内耳性めまい(症)」と診断されたと記されています。脳に異常が発見されない、つまり神経症状がなく、画像上でも問題がなかったので「中枢性めまい」ではないと言う結論だと思います。
確かに、典型的な「中枢性めまい」は、「ろれつが回らない」「手足の一部がシビレルあるいは上手く動かない」などの神経症状を伴いますが、そうでない「めまい」も多くあります。また、典型的な「内耳性めまい」では、「めまい」に耳鳴りや難聴を伴うことがしばしばありますが、やはりそうでない「めまい」も多く存在します。これらを見極めるのは、「めまい」を専門に見ている耳鼻咽喉科専門医でも困難な場合が少なくありません。質問からは「内耳性めまい」とした根拠が読み取れませんので何とも言い難い状況です。
視点を変えて、地震酔いという観点から考えてみましょう。船酔いのように長時間にわたって、先に述べた内耳のセンサーが異常な刺激を受けた後に、陸に上がっても船に乗っているような感覚が長く続くことがあります。本当の原因はよく分かっていませんが、中期記憶に関係する深部脳の海馬が関与しているのではないかと考えられています。
一方、地震はそれほど長い異常刺激ではないので、船酔いとは異なると考えられます。また、地震では揺れと言う物理的な刺激と同時に、生命に危険を感じるような強い衝撃も記憶されます。これが、毎日揺れている感覚につながっているのではないか、すなわち、先に述べた精神的(心理的)要素の強い「めまい」ではないかと考えられます。
質問の「めまい」の裏に、重大な病気が隠れているとは考え難いので、この揺れる感覚は徐々に軽快して行くものと考えられます。(日本専門医制評価・認定機構協力)
(2012年4月27日 読売新聞)
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