「少子高齢化」への対策

就業者増やし「支え手」確保 / 女性・高齢者に働きやすい環境を

 少子高齢化で社会保障制度は崩壊する――。若い世代を中心に、そんな悲観論が広まっている。40年後には高齢者1人を現役世代1人で支える「肩車型」になると言われ、世代間の対立感情も強まる一方だ。超高齢社会の荒波を乗り切ることはできるのか。(林真奈美)

若者に不信感

対話集会で社会保障について話す野田首相(中央)(7日、兵庫県西宮市で)

 「年金制度は、どこかで打ち切ってはどうか」「税金を上げたら希望が持てるのか。現状では厳しいと感じる」「今の受給者の年金を半分にすべき」

 兵庫県西宮市で7日に開かれた政府主催の「『明日の安心』対話集会」。出席した野田首相に対して、若い世代を中心に、社会保障制度の先行きへの不信感を訴える声が相次いだ。

 昔は1人のお年寄りを大勢で支える「胴上げ型」、今は3人で支える「騎馬戦型」、2050年代には1人が1人を支える「肩車型」に――。野田首相がこう表現する超高齢社会の厳しさに、国民の危機感は募る一方だ。読売新聞社が1月に実施した世論調査では、少子高齢化で社会保障制度が維持できなくなると答えた人は93%に上った。

 65歳以上の高齢者1人を支える20~64歳の人数は、将来推計人口などによると1970年の8・5人が2010年には2・6人になり、50年には1・2人まで減る見込み。「とても支え切れない」というのが実感だろう。

 だが、これは実情を反映したものとは言い難い。

65歳以上2割就労

 社会保障の支え手は、働いてお金を稼ぐ就業者だ。65歳以上でも2割は働いている。逆に現役世代でも子育て期の女性を中心に3割近くが就業していない。実際の「支える人」と「支えられる人」の割合は、現役世代と高齢世代の人口比率とは全く違う。

 今後は社会保障のなかで子育て支援なども拡充される。高齢者だけが「支えられる人」とは言えない。

 「視点を変えて、社会全体で就業者1人が何人の非就業者を支えるかを見ると、1人程度でこの数十年間ほぼ安定しており、将来もあまり変わらない。実態としては、若い世代の将来の負担が何倍にもなるわけではない」と、権丈善一・慶応大教授は話す。

 子供なども含めて広く扶養の負担を見ると、高齢者が増える一方で子供が減り、従来はほぼ一定。今後は高齢者が急増するが、女性や高齢者の就労拡大が見込まれる。09年の年金財政検証で用いた就業率の見通しを基に試算すると、50年でも就業者1人が支える人数は1・1人程度で、今の1割増しにとどまる。

 「女性や高齢者が働きやすい環境を整え、支え手に回る人を増やすことで、少子高齢社会の荒波も何とか乗り切れることがわかる。少子高齢化に耐えうる仕組みに転換するには、雇用の見直しこそが最重要課題」と、試算した権丈教授は強調する。

柔軟な働き方提供

 もっとも、実現には努力を要する。

 年金財政検証の就業率の見通しは、労働政策研究・研修機構の推計値を基にしたもの。女性30~34歳で10年の64・1%が30年には75・6%、男性65~69歳で46・8%が62・7%と、かなり大幅に上昇する設定だ。

 高い目標だが、総人口が減少に転じ、働き手の確保は成長戦略としても欠かせない。経済成長は社会保障制度の安定性も高める。

 では、どんな対策が求められるのか。

 第一子の出産前後に退職する女性は6割に上り、20年前から変わっていない。保育所不足や長時間労働のため、働く意欲があっても断念している人は多い。「保育サービスなど子育て支援の拡充と、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の確保など働き方の改革の両面から取り組み、働く意欲のある人がすべて働けるようにする必要がある」と、宮武剛・目白大客員教授は話す。

 ワーク・ライフ・バランスへの配慮など柔軟な働き方の開拓は、体力や意欲に個人差が大きい高齢者の雇用拡大にも通じる。働く高齢者が増え、年金支給開始年齢の引き上げが可能になれば、支え手の負担も減らせる。

 さらに、一人一人の支え手としての「体力」を強化する意味でも、低賃金や不安定雇用にあえぐ非正規労働者の処遇改善が急務だ。

 「短期的に支え手を増やすこうした対策が、長期的には出生率の向上をもたらし、社会保障制度の安定につながる」と、宮武客員教授は見通す。

 社会保障の将来がどうなるかは、今後の取り組み次第。悲観論を乗り越え、着実に対策を進めていくことが重要だ。

2012年4月25日 読売新聞)

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