タレント・細山貴嶺さんインタビュー全文(3)いじめ克服、教師目指す
――今、教師になるために、大学進学を目指しているんですよね。なぜ教師になりたいと思ったのですか。
「いじめられた経験をもとに、いじめられっ子に寄り添ってあげたいと思ったためです。いじめが多く起こっている小、中学校の教師になりたいですね」
――いつごろから夢になったんですか。
「いじめが一段落した時に振り返ってみて、やっぱり教師の対応ってすごく大きかったんですね。ある学校では教師も見て見ぬふり。もしかしたら加担していたかもしれない。でも別の学校では、教師が僕のことを気遣って、苦しいいじめを乗り越える手助けをしてくれた。いじめが終わって1か月か、2か月かたったころ、そんな教師になりたいという夢を持ちました」
――それまでは、このまま芸能界の仕事を続けようと考えていたのですか。
「いじめの傷が完璧に消えていないころは、まったく自信がなかったので、将来の展望もまったくなかったんです。この後僕はどうなるんだと。特にこれになりたいという意欲もなく、こういうつらい日々が続くのかなと漠然と思っていたので、将来に夢も抱けなかったですね」
――振り返って、本当は教師にどんな対応をしてもらいたかったですか。
「やはり、いじめから救ってくれた学校と同じことをもっと早くしてほしかったですね。学校として、とりあえず誰が悪いかは置いておいて、誰かが傷ついているならば、それを助けるという姿勢を見せる。そういう学校の姿勢が僕には大きく、1番助かったし、1番ありがたかったですね」
――いじめを教師に伝えることも大変です。いじめを学校が把握するためにどうしてほしかったですか。結構狡猾(こうかつ)に振る舞ういじめっ子も多かったそうですね。教師の前じゃ味方のように振る舞ったりだとか。
「いじめというのがどうやって起こるのか理解している教師がどれぐらいいるのかは疑問です。一見、仲良く見えるのに、裏ではいじめが行われているということも、教師に伝えていかなければならないでしょうね。まずはそういったケースもあるということを教師が知ることが第一歩だと思うんですよ」
――いじめがありそうだということがわかったとしたら、どういう声かけをしてもらいたかったですか。
「もし、いじめがあるんじゃないかなと察した場合は、ほかの生徒に見えないところで、『最近大丈夫?』とか、『何かあったらいつでも言ってね』、ということを言ってほしい。その時にいじめられっ子が、いじめがあるということをすぐ教師に伝えるかといえば、必ずしもそうではないと思うんですけれども、本当に苦しくなった時に、誰か頼れる人がいるということを思い出すことができる。だから、教師が察した場合は、何かあったら頼ってくれと繰り返し声をかけることがいいんじゃないかと思いますね」
――いじめの傷は完全に消えたわけではないそうですが、例えばどういう時に傷を感じるのですか。
「町中で、若者が『お前マジ死ねよ』とか、『ウザイんだよ』とか言っていますよね。もちろんグループの中では普通のコミュニケーションのつもりで使っているのかもしれないんですけれども、それが自分にとってどれだけ大きい言葉だったのかなということを感じます」
自分の体験書いた本で、救われる子いれば
――本を書いたきっかけは?
「高校1年の秋頃、いじめも一段落して、ダイエットの本を書こうと思っていたのですが、ダイエットした理由の大きなところにいじめがある。いじめられた時のことを考えているうちに、自分の体験を本にすることで救われる子がいれば書きたいなと思い、こういう本になりました」
――反響の声が届いていますか。
「今、いじめられている中高の生徒とか、いじめられっ子の母親とかから手紙がきました。新しい中学に入ってから、いじめられて自傷行為をしていたという子は、もしかしたらマイナスのことでも、考え方を変えればプラスに変わるかもしれないというメッセージをくみ取ってくれ、自傷行為をやめることができたという声を届けてくれました。お母さんの方は、昔の僕のようにぽっちゃりした息子がいて、僕の本を読んで、『いじめられたりしたことはなかったか』と聞いたら、実は昔あったと言われたそうです。親としても、いじめ問題について考えていかなければいけないというメッセージを頂きました」
――いじめっ子からは感想は届いていない?
「そうですね。でも、いじめっ子にも読んで欲しいですね。例えば、全く悪意がなくて、友達として接しているつもりでも、ちょっとした言葉が誰かを傷付けているかもしれないということをわかってほしい」
――昔いじめられた子と会ったら、いじめた意識が相手になくて驚いたエピソードを書いていますが。
「あれは、衝撃的でしたね。僕からしたらすごく苦しい経験だったし、本人は自覚していじめていたんだろうと思っていたので、こういうこともあるんだって。いじめっ子だって、自分がいじめているってわからないこともあるんだって驚きました」
――同じ学校にいた子は読んでいるのでしょうか?
「前の学校にいた友達が、すごくびっくりしています。同じ環境にいたにもかかわらず、いじめの存在に気付いていない子が多かったんですね。僕にとっては、いじめは日常茶飯事だったんですけれども、意外と知られていなくて、衝撃的でした。見えにくいいじめを解決するのは難しいなと改めて感じましたね」
――今は周りの友達とも仲良くやっているんですね。
「毎日仲良くしています。今は生徒会長で、卒業式で送辞を読んだばかりです。自信がついた今では、芸人さんのように、クラスで人を笑わせることもできます。生徒会長は、毎回始業式や終業式にスピーチがあったりするんですが、そういうところでも、笑わせたりだとか。やはりいじめられた経験がなかったら、誰かを笑わすといううれしさも感じられなかったと思います。いじめはもちろん悪いことですが、いじめられた経験というのは、今は自分にとってプラスに働いているなと思います。今は学校生活を楽しんでいます」
――今年はバレンタインデーにチョコレートももらったんですよね。
「それが、全部義理チョコとか友チョコで、本命チョコが全くないんですよね。でもまあバレンタインデーにチョコをもらえるかなとか、ちょっとした日常の幸せというのも感じられるようになったんで、まあ良かったです(笑)」
自分のプラス部分見つけて、自信付けて
――今、いじめで苦しんでいる子にメッセージを。
「もし、今いじめられていて、自分に短所や悪いところがあると思っていても、場所を変えれば、または考えようによっては長所になるかもしれない。簡単ではないと思うけれど、自分のプラスの部分を見つけて、自信を付けてほしいです。そして、誰でもいいから、いじめられているということを相談してほしい。絶対にあきらめないで!その一言です」
――逆にいじめっ子にメッセージを言うとしたら?
「たとえ、友達だと思って、からかったり、軽い感じでうざいんだよと言ったりしたとしても、中には傷ついている子もいる。一つ一つの言葉について、誰かを傷付けていないか考えてほしい。それに、いじめている子も何らかのストレスを抱えているから、そんなことをしているのかもしれないですよね。いじめっ子の方も、勉強づけで苦しいだとか、何か悩みがあるならば、まずは誰かに相談してほしい。いじめのコールセンターでも、学校のカウンセラーでも、教師でも親でも誰でもいいんで、いじめっ子もいじめられっ子も苦しかったら誰かに相談してほしいです」(おわり)
(2012年4月21日 読売新聞)
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