(3)おむつを外し自信回復

 寝たきりの人は、尿意も感じないから、おむつで当然――。20年前に介護の仕事を始めたころは、そう思い込んでいました。

 でも、それは大きな誤解でした。寝たきりの人も多くは尿意を感じるし、工夫すればおむつを外せる。そう気付かせてくれたのは、青森の施設で出会ったフジ子さん(仮名)です。

 関節リウマチのため寝たきりで、常におむつだったフジ子さんが、ある日、こう言い始めました。

 「おじいさん(夫)の墓参りに行きたい」

 聞けば、お墓は四国の松山。当時は、お年寄りのおむつ交換ができる場所など、ほとんどありません。そう説明しても、「トイレに行くから」と、あきらめません。私は、最後の切り札のつもりで言いました。「でも、おしっこが出ることも分からないよね」。すると、フジ子さんが怒って叫んだのです。「おしっこ分かるよ! 聞いてくれないから言わなかっただけ!」

 私はハンマーで殴られたような衝撃を受けました。それまで、問答無用でおむつを押し付けていたことに、初めて気付いたのです。

 その後、フジ子さんはおしっこがしたくなると教えてくれるようになり、一緒に移動方法などを工夫するうち、トイレで排せつできるようになりました。運動機能も見違えるように向上。食欲も出て、どんどん元気になっていきました。

 おむつが外れると、お年寄りは自信を回復し、笑顔が増えます。本人の状態に合わせてトイレの環境を工夫すれば、意外に行かれるもの。ポイントは〈1〉部屋から近い〈2〉洋式〈3〉寒くない〈4〉手すりの位置が適切〈5〉床が滑らない〈6〉ペーパーの位置が使いやすい。清潔で明るいことも重要です。ぜひ、試してみてください。(青山幸広、介護アドバイザー)

2012年4月18日 読売新聞)

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