ミチコさんの人“性”塾
2012年4月16日
「生まれるか」を自分で選ぶなら… 河童のお産

芥川龍之介は小説「河童」のなかで、お産の場面を次のように描いています。
河童もお産をする時には我々人間と同じことです。やはり医者や産婆などの助けを借りてお産をするのです。けれどもお産をするとなると、父親は電話でもかけるように母親の生殖器に口をつけ、「お前はこの世界へ生まれてくるかどうか、よく考えた上で返事をしろ。」と大きな声で尋ねるのです。バッグもやはり膝をつきながら、何度も繰り返してこう言いました。それからテエブルの上にあった消毒用の水薬でうがいをしました。すると細君の腹の中の子は多少気兼ねでもしているとみえ、こう小声に返事をしました。
「僕は生まれたくありません。第一僕のお父さんの遺伝は精神病だけでもたいへんです。その上僕は河童的存在を悪いとしんじていますから。」
バッグはこの返事を聞いた時、てれたように頭をかいていました。が、そこにい合わせた産婆はたちまち細君の生殖器へ太い硝子の管を突きこみ、何か液体を注射しました。すると細君はほっとしたように太い息をもらしました。同時にまた今までの大きかった腹は水素瓦斯を抜いた風船のようにへたへたと縮んでしまいました。
「河童」は芥川龍之介の最晩年の作品の一つです(1927年3月発表)。これを書いている時、芥川はすでに自死を思い決めていて、その心中を河童の胎児に託していたのでしょう。
人間も、この河童の国のように、生まれるか、生まれないかを自分で選択するのだとしたら、私はどちらを選ぶだろう・・・。十代でこの小説を読んで以来、折りにふれて、この問いかけが頭をもたげてくるのには閉口してしまいます。
ちなみに、10人の知人にこの問いを発したところ、「生まれたい」と答えたのは2人、「生まれたくない」が2人、私と同じように「うーん」といったまま、いつまでも煮え切らないままでいたのが6人でした。
あなたの場合はどうでしょうか。
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- プロフィール
- 高柳美知子(たかやなぎ・みちこ)
- 1931(昭和6)年、東京生まれ。中学・高校の国語教師などを経て、現在は“人間と性”教育研究所所長。
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コメント
どうでしょうね。
自分の両親にまかせてよかったと思ってます。
先生とも会えましたし。
芥川龍之介先生も現代にいたら、治療可能でしたでしょう。河童の子供に自分の病を被せて表現なさるほど辛かったでしょうね。
でも先人達の苦しみを生まれてきた子供が大人になって、今ではりっぱな治癒への道を開けるようになっています。
今、どこで何を想っているか芥川龍之介先生もその子孫が現代に見守られている姿を天界から見下ろしながら微笑んでいる事でしょう。
始まりは河童でさえ雌が雄を追うという両親まかせ、生まれる時、親から聞かれるという、やはり両親まかせ。人とどう違いがあるやら。
まだ見ぬ世界を親が問う。
両親でさえまだ見ぬ子に聞くのですから。
経験というものを恐れずにしてみろという物語なのでしょうかね。辛い事もふたりいれば手をさしのべられる男女という生き物は河童より不思議な生き物ですね。
みちこ先生のお子さんはどう思っているのでしょう。どっちにしようか迷っていたら欲張りかな。したいしたくない。いいことじゃないでしょうか。それでいいじゃない。