震災1年を前に(2)全国から医師 被災地へ
チームで在宅医療支える
東日本大震災の被災地では、今も全国から駆けつける医師らにより地域医療が支えられている。通院が困難な高齢者や、終末期を迎えて病院を退院した患者宅を、医師が訪問する在宅医療の現場を訪ねた。(内田健司、写真も)
石巻に開業
東京・文京区で在宅専門の診療所を経営する武藤真祐(しんすけ)医師(40)は昨年9月、被災地を支援しようと、宮城県石巻市に「祐ホームクリニック石巻」を開業した。毎週行き来しながら、週に4日ほどは石巻に駐在し、患者宅を回る。緊急時以外の往診は、簡単な診察結果などの記録も担当する運転手と、看護師の計3人で移動する。
武藤さんの不在時などには、遠方の民間病院などから、医師が派遣される。応援の医師が、自宅で療養する患者を看取(みと)ることもある。チームで動くことで、土地になれない医師の負担を軽減したり、地元の看護師らが患者家族の様子を見続けたりすることができる。
10センチの雪が降り積もった2日、武藤さんは昼前に、仮設住宅で暮らす、遠藤義雄さん(86)、和子(よりこ)さん(82)の夫妻宅を訪問し、日ごろの暮らしぶりを聞きながら2人を診療した。震災前の住宅は全壊、避難所で一時過ごし、仮設に移った。
2人は高血圧などの持病を抱える。仮設住宅は近所に買い物に行く場所もなく、出歩く機会はめっきり減った。毎月2回、医師が訪問し、診療所の隣で石巻薬剤師会が運営する薬局の薬剤師が処方薬を届け、服薬指導などを行う。
診療所は現在、約80人の患者を抱え、1日10人程度を診る。少しでも患者と寄り添おうと、一緒に写真を撮ったり、往診時に誕生日カードを手渡したりするなどの気配りも。和子さんは「先生に来てもらえると思うだけで、安心して暮らすことができる」と話す。
生活全般も支援
被災地では、仮設に入らず、比較的被害の少ない自宅の2階などで暮らす人も少なくない。仮設住宅に比べて、行政の支援が行き届かないケースも目立つ。医療に限らず生活全般を支えるには何が必要なのか。往診などで、そうした人々と接することが多い武藤さんは、昨年10月、在宅避難世帯の実態調査にも乗り出した。
民間企業やボランティア団体と連携し、市内と、隣接する女川町で2000世帯以上を戸別訪問。住民の健康状態などを聞き取った。被災地域は高齢化率が高いが、調査によって、在宅避難世帯の6割に65歳以上の高齢者がおり、そのうち独居が1割、老々世帯が2割を占める実態が明らかになった。また、避難による環境の変化や、不安感から3分の1の人が体重減となったことも分かった。
調査では、誰がどこでどんな支援を必要としているかの情報も収集、支援活動も始めた。毎週、関係者が集まって情報を共有し、健康面の不安があれば市の保健師、住宅修理の相談があれば建築士などと、具体的な支援方法を決める。防寒対策の要望は、行政などに働きかけ、毛布をボランティア団体が配布する。武藤医師は、「医師としてどういう形でまちづくりに貢献できるか考えている。急速に進む高齢社会に必要なサービス提供のモデルを作りたい」と意気込む。
被災地域の多くは、もともと医師が不足し、在宅医療の担い手も少なかった。
宮城県気仙沼市の市立本吉病院では、医師の卵である後期研修医が外来の傍ら、往診を行う。日本プライマリ・ケア連合学会が全面支援する取り組みで、交代で診療にあたる医師の多くは手弁当で駆けつけている。学会で専従コーディネーターを務める林健太郎医師は「リハビリにも力を入れていきたい。継続と責任を重視し、支援する計画だ」と話す。
(2012年2月29日 読売新聞)
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