(中)礼儀の国同士わかり合う
東日本大震災での被災者の落ち着いた振る舞いは、日本人の礼儀正しさとして称賛された。インドネシア人介護福祉士候補の研修を受け入れている医療法人健正会理事長の浜崎寛さん(78)は「インドネシアも礼儀の国だ」と実感している。職務を忠実に果たすプロ意識にも感心する。
石川さん(左から2人目)から、漢字の読み方などを習う(左から)フィトリアニさん、アリアニさん、エカさん、リオさん(1月31日、大阪市住之江区の「介護老人保健施設 はまさき2」で)=守屋由子撮影 |
年長者への敬い
大阪市住之江区にある「はまさき1」から浜崎さんが、出かけようとすると、エルランド・クリスティアントさん(25)が先に出て門を開ける。「どうぞ」。屈託のない笑顔に、浜崎さんは「普段から身に着いている礼儀だ」と感じる。年長者を敬うことはインドネシアの文化。エルランドさんは「とても自然なことです」と話す。
理事の浜崎みち子さん(76)には、エルランドさんが朝、利用者の部屋を開ける際に、「おはようございます。今日はいかがですか」という声が心地いい。「あいさつに心がこもっているから」という。
フィトリアニ・ラマさん(32)は、お年寄りと話す際、心がけていることがある。「丁寧な言葉で優しく話します。利用者さんに喜んでもらうため大切なことだと思う」
仕事つらくない
アリアニ・スティアシさん(36)は、首都ジャカルタの総合病院などで、13年間、看護師を務めた。がん、心臓病、命にかかわる病気の看護も多く、幾度も患者の死に立ち会ってきた。「患者さんが亡くなると、家族は悲しんで涙を流します。長く入院している患者さんや家族とは仲良くなり、私も亡くなると本当に悲しい。でも仕事中は泣けません。心の中で泣くんです」
よく介護の仕事は厳しいといわれる。でも5人とも「仕事でつらいと思うことはない」と声をそろえる。トイレや入浴、食事の介助。時には利用者が嫌がることもある。リオ・アンドリヤントさん(23)は「利用者さん、言うこと聞いてもらえないこともしょっちゅうある。でも苦にはならない。『一緒に遊びましょう』という気持ちで接しています」という。
エカさん(26)も「認知症の利用者さんもいて、全てがうまくいかないのは当たり前。イライラしてもしかたない」と笑う。プロ意識もしっかり持っている。
日本人にも刺激
「失敗しても怒らずにどうすればいいか教えてくれた」「日本語や介護の勉強を熱心に教えてくれる」。5人は、スタッフがしてくれる研修の手助けに感謝している。
エカさん、アリアニさんは、介護士長の石川和寛さん(35)と、2月中旬、漢字の勉強をした。この日は、「応急処置」「拒絶」「有効期限」など介護の現場や、事務手続きなどで使う言葉の読み方、意味を学んだ。応急処置には「わかります」と余裕のエカさんも、「違和感」はさすがに難しい。
石川さんが「違と和と感の漢字の意味から連想できる?」とヒントを出すと、うなずく2人。「何となくわかるけど、細かい意味まではわかりません」。介護の仕事が一段落した時、毎日のように日本人スタッフと、言葉や介護方法などの勉強をする。「仕事や勉強で体は疲れるけど、毎日が楽しい」とフィトリアニさん。
石川さんは「言葉で多少不自由するところもあるけど、身ぶり手ぶりでカバーして、介護の実務は申し分ない。なによりあの一生懸命さに、日本人スタッフも『がんばらないと』という励みをもらっています」と、こちらも5人に感謝。(聞き手 古川恭一)
(2012年2月20日 読売新聞)
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