「不検出」が意味すること
自分が内部被曝をしているかどうかを調べるため、2011年12月、尿を採取して検査機関に検査を依頼したところ、放射性物質は検出されなかった。この結果は内部被曝をしていないことを意味するのか。NPO法人市民科学研究室代表の上田昌文さん =写真= に話を聞いてみることにした。上田さんは、研究室内に「低線量被曝研究会」をつくり、放射線被曝による影響について研究している。
1月中旬、東京・千駄木にある研究室を訪ねると、上田さんは「尿検査では、正確に内部被曝の量を測れない」といきなり、切り出した。
上田さんによると、体内にたまった放射性物質がどれだけ尿に出てくるかは、尿の採取条件などによって変わってくる。例えば、水分を多く取ったら尿に出てくる放射性物質の濃度は薄まる。また、代謝の速度は人によって異なるため、尿の採取にどのくらいの日数をかけたかなどによっても検査数値は変動するというのだ。
今回、検査に必要だった尿の量は2リットル。採取した日が寒かったせいか、私は頻繁にトイレに行き、1日で集めることができた。ただ、ふだんより多めに水分を取った気がする。だから、薄まってしまったのかもしれない。別の機会に数日かけて尿を採取し、再び検査をすれば、検出される可能性もあるわけだ。
ただ、上田さんは私の結果報告書に書かれた「検出下限値」に目をやり、「これで不検出なら、内部被曝をしているとしても、ごく微量で、健康への影響はあっても極めて少ないと言える」と指摘した。検出下限値とは、測定ができる限界値のこと。今回、計測した放射性物質の「ヨウ素-131」、「セシウム-134」、「セシウム-137」の検出下限値はそれぞれ、0.15ベクレル、0.19ベクレル、0.17ベクレル(いずれも1キログラムあたり)だった。仮に内部被曝をしているとしても、この数値よりは低いということだ。
尿検査で調べられるのは、検査時の体内の状況だ。検査数値は、これまで食事や呼吸によって体内に取り込んだ積算量ではない。
放射性物質には、放射線を出す能力が半分になる「半減期」がある。ヨウ素131は8日、セシウム134と137はそれぞれ約2年と約30年だ。ただ、体内に入っても、これらの物質は少しずつ排泄されるため、体内にたまった放射性物質の量は、ヨウ素131が8日、セシウム134と137は100日ほどで半分になるとされている。毎日、ヨウ素やセシウムを摂取し続けていれば話は別だが、例えば3月に摂取していても、それ以降は摂取していなければ、12月に測った尿検査に、その影響は反映されないということになる。
これらのことに加え、今回はストロンチウムやキセノンなど、ヨウ素やセシウム以外の放射性物質は計測していない。尿検査の結果は、内部被曝の状況を知る目安程度と考えるのが妥当で、よほど高い数値が出ない限り、一喜一憂する必要はなさそうだ。とは言え、子どもの尿から微量の放射性物質が検出され、今後、どう暮らしたらいいのか頭を抱える親たちは少なくない。次回は、そうした母親の苦悩を紹介する。
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コラム「放射能と向き合う」は、医療情報部の利根川昌紀記者が担当しています。 ご意見・情報は こちらへ。
(2012年2月1日 読売新聞)
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