(88)遺産分割の決定、解除不可
遺産が土地建物の場合、複数の相続人に分けにくいこともあります。そんなとき、土地建物は1人に相続させ、その代わりに他の相続人に金銭を支払わせる形の遺産分割もあります。
この金銭を「代償金」と言います。ときに、その代償金の支払いが滞り、紛争になることがあります。
一般的な契約の場合、例えば売買契約で相手が代金を支払わなかったら、債務不履行となり契約を解除できます。
同じように、代償金の不払いでも、遺産分割協議を白紙に戻し、やり直しできてもよさそうですが、そうはなりません。
遺産分割協議は、遺産を誰がどれだけ引き継ぐかを決めることなので、それが決まれば協議は終了で、その解除はできない、とする判例があります。
代償金の支払いは、遺産分割協議とは別の約束事項だというわけです。
ですから、代償金を支払ってもらう側は、支払いが確実に行われそうか、担保は無くて大丈夫か、などの検討をしておくべきです。
また、父親が亡くなり、残された母の世話をする約束で、長男が遺産を全部相続したが、その後、長男一家と母の仲が悪くなって別居してしまったため、紛争になった例もあります。何も受け取らなかった相続人は憤慨するのですが、一度決定した遺産分割協議を解除することはできません。
「世話をする」という約束だけでは、守れなくなった時どうなるのか、あいまいです。万一の場合の扶養料、あるいは生活費の負担をどうするかなども、きちんと話し合っておく必要があります。(赤沼康弘・弁護士)
(2012年2月1日 読売新聞)
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