福島に残って…。私は「バカ親」?

 地域の親子が集う「スマイル☆キッズオンパク」を始めた

 大平ひかる(おおひら・ひかる)さん(46)(福島県いわき市)


 
フランスから送られた支援物資の牛乳を配るボランティア活動をする大平ひかるさん(左)(大平さん提供)

 震災後、いわきに残る人、出ていく人と様々でした。私も東京にいる親戚から、「いつでもおいで」と声をかけてもらっていました。でも、いわきを離れる勇気がありません。

 私には3歳になる娘がいます。仕事がある夫だけ残し、私と娘だけ避難するという方法もあったと思います。しかし、家族が離ればなれになったら、娘も不安になるだろうと思うと、決心がつきませんでした。

 福島第一原発が水素爆発を起こした後、ネット上のブログやツイッターには、「早く逃げて!」「子どものためを思えば避難するべきだ」などの書き込みがいくつもあり、それを読むと、福島から離れなかった自分が責められているような気になることさえありました。

 「自分はバカ親か!」

 自責の念にかられました。

 私とは反対に、いわきから避難した人が、「逃げた」と思われることを気にしているという話も耳にしました。でも、私からすれば、「よくぞ決心した!」という思いです。

 いわき市では、多くの人の予想に反し、4月から学校が再開されることになりました。県外などへと避難していた親子も戻らざるを得ない状況でした。

 「給食は大丈夫なのか」「外で体育の授業は受けさせられるのか」……。

 不安はつきません。戻ってきた人も、外で遊ばせることはできません。

 ある日、友人が、「市の宿泊施設『湯の岳山荘』を無料で貸してくれるらしいよ」と伝えてきました。

 「子どもたちを遊ばせたいよねー」

 私が、旅館組合の理事長さんに「食材を調達できないか」と相談すると、地域の青年会議所(JC)などのメーリングリストに、「子どもたちが遊べる催しをしたいので、物資を提供してください」ということを書き込んでくれました。そして、各地から支援物資としていただいた食べ物などを提供してもらえることになりました。

 4月初旬から活動を始めました。この活動は「スマイル☆キッズオンパク」でと決めました。オンパクとは、温泉街を中心に行われる催しのこと。ここ、いわきでも「いわきフラオンパク」を開催しています。

 4月9日には、いただいた支援物資のサツマイモなどを使い、石釜で焼き芋を作るなど、親子で楽しいひとときを過ごしました。その後は、ボランティアの方々がお絵描きや粘土遊びを楽しむ会を開いたり、お母さんのためのスマホ(スマートフォン)教室があったり。

 最初は子どもたちのために始めた企画でしたが、実はお母さん、お父さんが日ごろのストレスを解消する場にもなりました。「子どもたちへの食べ物はどうしている?」「外で遊ばせている?」……。皆、外に出ていなかったから情報交換をすることも出来なかったのです。

 最初は、小学生が多かったですが、だんだん、小さいお子さんも来るようになり、多いときは100人を超えました。人手が足りないので、運営は参加者にもお願いしました。皆さん、「参加して良かった」と話してくれました。

 月2回の割合で、土曜日に開催しました。9月初旬まで活動は続けましたが、今はいったん、休止しています。8月に入り、街で復興イベントが増えたり秋の学校行事が始まったりしたためです。でも、また、必要な時には再開したいと考えています。

 私には放射能をなくすことはできません。今、できることは、娘の被曝を最小限に食い止めることです。今でも、娘といっしょに福島にいて、いいのだろうか悩んでいます。ここにいる限り、その思いが消えることはないと思います。

 外出時には、今でもマスクをさせます。今は水道水を使わず、ミネラルウオーターを使っています。地元で採れた野菜も食べていません。娘がいなければ食べたかもしれないけど。農家の方々には申し訳ないと思います。「基準値以下」の表記ではなく、「検出されず」だったら、買うかもしれません。野菜についた放射性物質は煮こぼすことで減らせると言います。私も調理する時は必ず、この作業をします。今はそれほど面倒だとは思わなくなりました。

 震災前の生活を取り戻すことはもうできないと思っています。私自身、心と体が健康でなければ、子どもは守れません。これから、新しい生活を作っていかなければいけないと思っております。

◇        ◆         ◇

 コラム「放射能と向き合う」は、医療情報部の利根川昌紀記者が担当しています。 ご意見・情報は こちらへ。

2011年11月21日 読売新聞)

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