ドクター柴原の漢方塾

2011年11月18日

「体がだるい」 という症状(2) 気虚を改善する方法とは・・・

 前回は「体がだるい」という症状は、漢方医学では「気虚(ききょ)」という状態でみられる症状であると書きました。それでは、この気虚という状態になった時、どのようにすればよいのでしょうか?

 人は胃腸などの消化管を通して飲食物から、肺を通して空気から気を取り入れているので、体の中にあるべき気の量が不足した時には、取り入れる気の量を増やす必要があります。

 では、どのようにして気の取り込みを増やすのでしょうか?

 「気虚」を改善する方法は、その原因によって異なります。気は空気や飲食物から取り込むので、原料である空気や飲食物に気が含まれていないと、取り込みは悪くなってしまいます。

 近年は規制強化もあって公害と認定されるような空気の汚れが少なくなっています。しかし、都市部から脱出して緑豊かな自然の中を散歩したりすると、何となく元気になったと感じる人もいると思います。森林浴の効果も同様で、漢方医学的には、良い気を多く含む空気から取り込む気が増えたことにより気虚の改善に関係したのだと思われます。飲食物においても空気と同じです。

 最近は、科学技術の発達に伴い、様々な食品が栽培されるようになり、「旬」ではない食品が大量に市場に出ています。栄養素という面では、ハウス栽培の野菜と天日を浴びて無農薬で育った野菜に違いはないと思います。しかし、漢方医学的には、天日を浴びて育った野菜の方が良い気を含んでいると考えます。干物も同様で、工場内で作られた物よりも天日干しの方が良い気を含んでいると考えています。このように、生活環境や食生活も気虚の発症に関係していますので、少し変えることで気虚が改善されることもあります。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 では、胃腸の調子が悪くなったために気虚となった時はどうでしょうか? 

 体がだるいので、元気が出るようにとステーキや焼き肉を腹いっぱい食べればよいと考える人もいると思います。しかし、どんなにおいしい高価な食事を取っても、胃腸の調子が悪いので気を取り込むことが出来ず、気の量は増えません。

 かえって胃腸の調子が悪化してしまい、改善すべき気の取り込みがますます減ってしまいます。胃腸への負担を減らす必要があるのです。

 昔から、風邪を引いたり、胃腸の調子が悪くなったりして元気がなくなると、「おかゆ」を食べていました。今でも、どんなの病気であっても、入院した際に食欲がない時にはおかゆが出されることが多いと思います。おかゆでは元気が出ないと考える方もいると思いますが、胃腸が弱っている時にはあっさりした物がよいのです。しかし、あっさりしたおかゆであっても、それを腹いっぱい食べるとやはり調子が悪くなってしまいます。胃腸の調子が悪い時には胃腸への負担を考えて、「こってり」ではなく、「あっさり」とした食事を腹八分目に取ることが重要なのです。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 このように、体のだるさを感じた時には、安易に大丈夫とは考えず、暴飲暴食を避けて胃腸を休める、天日を浴びて育った野菜中心の食事を取り、ゆっくりと深呼吸をするなどで良い気を取り込むことが重要です。生活面に気をつけることで体のだるさが改善しない時には、不足した気を補う作用がある漢方薬(補気薬)が用いられます。

 気虚に使用される漢方薬には様々なものがありますが、その多くのものに人参(にんじん)、いわゆる朝鮮人参や黄耆(おうぎ)が入っています。特に朝鮮人参は気を補う代表的な生薬です。中国の古書である「神農本草経」では、生命を養う目的の薬に分類されていますので、市販されている多くの滋養強壮剤に朝鮮人参が用いられているのも、うなずけます。

【人参(にんじん)】

 ウコギ科(Araliaceae)のオタネニンジンPanax ginseng C.A.Meyer(Panax schinseng Nees)の細根を除いた根又はこれを軽く湯通ししたもの

 主な薬理

 人参は、病後の体力低下、疲労倦怠を主訴とする補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯や、胃腸疾患に適用される人参湯、六君子湯に配合される生薬です。

 人参単独では、以下に示す抗疲労作用、副腎皮質ホルモン様作用、コルチコステロン分泌亢進作用が報告されています。

【黄耆(おうぎ)】

 マメ科(Leguminosae)のAstragalus membranaceus Bunge又はAstragalus mongholicus Bungeの根

 主な薬理

 黄耆は、関節の痛みを主訴とする防已黄耆湯、また病後の体力低下、疲労倦怠を主訴とする補中益気湯、十全大補湯、黄耆建中湯に配合される生薬です。

 なお黄耆は、補気薬として使われていますが、日本漢方においては体表の鬱滞(発汗異常や浮腫)を治します。

 一方、中医学では益気固表(気虚による多汗、風邪を引きやすい状態を改善する)と補中昇陽(脾胃気虚による胃下垂、脱肛などの内臓諸器官の下垂、頭痛への栄養供給不足によるめまい、視力、思考能力低下を改善する)の他、浮腫、尿量減少や関節や筋肉の疼痛、痺れ、片麻痺を改善します。

【出典:QLife漢方(キューライフ)「生薬辞典」より引用】

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プロフィール
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柴原 直利 (しばはら・なおとし)
医学博士。1960年生まれ。大阪府茨木市出身
富山大学和漢医薬学総合研究所漢方診断学分野 教授
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