排せつケア(上)「脱おむつ」で心も軽く
なるべくならおむつをしないで暮らしたい――。そんな高齢者の願いをかなえる取り組みが介護現場で広がっている。負担が大きい排せつ介護に正面から向き合うと、介護の質全体が変わってくるという。(小山孝、写真も)
データもとにトイレ案内
「病院では、おむつをなかなか替えてくれず、いやでした。おむつをしない今は、心うきうきです」
昨年から鹿児島県
病院ではおむつ交換を職員に頼むと、「また出たの」と言われた。おむつを着けた生活を続けるうち、尿意、便意は薄れていった。
「みどりの園」に入所した時、「おむつを外しましょう」と言われ、不安に感じた。だが、施設の取り組みで排尿や排便の感覚が戻り、1週間でおむつが外れた。長男は、「母の表情が明るくなった」と喜ぶ。
同施設では、2009年に排せつ介護の見直しを始めた。当時、短期入所を含めた約80人のうち、7割がおむつを着けていたが、今は3割程度。トイレに案内する職員の姿が目に付く。
多くの介護施設でおむつを外す取り組みが進んでいる。排せつのパターンを調べたり、うろうろ、そわそわするといったしぐさから尿意、便意を読み取ったり。トイレでの排せつを繰り返すうちにおむつが不要になる人が出てくる。「みどりの園」はこの過程にハイテク機器の活用を加えた。
まず行うのは、「ノム・ダス・ハカル調査」と呼ぶ3日間の調査。食事や水分量のほか、おむつの中やトイレで出した尿の量や、便の重さを細かく記録する。さらに、超音波測定器で、排尿前と後にぼうこう内にどの程度の尿があるのかを48時間連続して記録。それらのデータをもとに、その人に応じたトイレへの案内時間を決めていく。
同施設では以前もおむつ外しに挑戦した。だが、トイレに案内しても何も出ないことが多く、職員が疲弊し、挫折した。吉元みどり施設長は「今はデータに基づく根拠があるので自信を持って取り組める」と話す。
週1回、併設診療所の医師や施設の栄養士、介護職らが集まり、排せつ介護の会議も開く。職員全体で意識を共有することが狙いだ。
同施設が排せつにこだわるのには理由がある。おむつを外す過程で高齢者がベッドから離れることがリハビリになり、自尊心も回復する。そのことが職員のやる気にもつながるためだ。
介護職員の立元和之さん(26)は「以前は、おむつ交換の時間になると、お年寄りが急に無表情になり、周囲の空気が止まった感じがした」と語る。排せつを見直すことで、高齢者の食事の様子や表情、しぐさに目が向くようになり、利用者との会話も増えた。
加えて、年600万円かかったおむつの購入費と廃棄費用も、年200万円程度節約できたという。
ユニ・チャームが40~80歳代の男女542人に行った調査(2008年)では、介護が必要になっても自分でしたいことのトップは「排せつ」(92%)で、排せつケアが尊厳に関わる問題であることがうかがえる。
「ノム・ダス・ハカル調査」を取り入れた排せつ介護は、「みどりの園」のほか、鳥取県の社会福祉法人「こうほうえん」の介護施設など、全国約20か所で行われている。指導にあたる市民団体「市民の立場からのオムツ減らし研究学会」(東京)の田中とも江代表は「快適性を追求することで高齢者の意欲が高まり、感染症予防にもつながる。排せつから介護を見直してほしい」と話している。
(2011年11月8日 読売新聞)
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