「平穏死」石飛幸三さんインタビュー全文(2)胃ろう患者の大半、食べる力回復しない

 ――老衰で口から食べられなくなったら、人工的な水分や栄養の補給はなるべく控えて、枯れるように最期を迎えることを勧めていますが、「年寄りの命を粗末にするな」というような批判はなかったですか。

 石飛 覚悟していたのですが、全くありません。だから講演でも遠慮がなくなり、ついつい過激になってしまいます。

 口から食べられないというのは老衰の終点、生物体としての最期です。だれでも、いずれそうなります。そうなった時に胃ろうを望むか、と聞けば大抵の人は嫌がります。胃ろうをよく知っている医療関係者も大半が「ノー」です。

 ところが今の日本では、口で食べられなくなれば、胃ろうが当たり前のように行われています。自分が嫌なことを、人にするというのは倫理にもとるのではないでしょうか。医師は、可能な医療を控えることが「医療放棄だ」と訴えられるのが怖くて、責任を先送りしているだけです。

 ――「水分や栄養の補給をしないことは、餓死させることと同じだ」と考える医師もいると思います。

 石飛 その点を勘違いしている人が多いのですが、食べさせないから死ぬのではないのです。人生の終焉(しゅうえん)を迎えようとしている人なのに、食べさせないといけないと思いこんでいるのです。水分も栄養も不要になった体に過剰に与えれば、体の中がおぼれたような状態になり、逆に苦しめるだけです。機械に燃料を入れて、動かすような訳にはいきません。

 ――終末期の脱水は決して不自然ではないということですね。著書でも、芦花ホームで過剰な水分や栄養補給を控えたところ、肺炎が減り、救急車を呼ぶ回数も減る一方、静かな老衰死が増えたという変化を紹介しています。

 石飛 それに考えてみてください。まだ元気な私たちは、食べたい時に食べて、食欲がない時には食べません。でも胃ろうになった人は「今日はいらない」と意思表示できない人ばかりです。体が本来持っている食の調節機能が無視されて、栄養剤を注入されています。言い過ぎかもしれませんが、一種の強制、拷問のようなものです。

 もちろん、手術後のリハビリ時に一時的に使うなど、意味のある胃ろうはあります。でも現在、胃ろうの患者の7割以上は食べる力が回復することはありません。(つづく)

2011年7月1日 読売新聞)

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