作家村山由佳さんインタビュー全文(4)動物としての人間、大震災で思い出すか
――若い男性を対象にした厚生労働省の調査によると、「セックスに関心がないか、嫌悪している」という人の割合は、2年前に18%くらいだったのですが、最近調べたら36%になっていた、ということです。
村山 2倍ですか。そんなにですか。えー、みんな本気で言ってるの? うらやましいです、煩悩の塊なのに。うわー、どうしよう、そうしたら恋愛小説なんか書けなくなっちゃう。ちょっとショックですね、3人に1人は興味がないなんて。気分なのかしら。さらに2倍にならないことを祈ります。
草食系という、周りがベジタブルな、植物園のような感じでいる中で、肉食動物でいるのは難しいのでしょう。(草食系が)心地いいという雰囲気の中で、みんなそういう風になっていくのかもしれませんけどね。
これまで日本は平和すぎました。こんな大災害(東日本大震災)が起きましたが、それまでは何も身の危険を感じずに済んでいた。若い人たちには「貯金が趣味」という人もいました。命をとられるという危険がなかったですから、動物として退化していくということがあるのかもしれません。こういう未曽有の事態を迎えて、変化が現れないとも限らない。
動物としての根源的なところを離れても生きていけたから、草食系に流れていたけれど、今回の震災で厭世的にならなければ、みんな動物であることを思い出すのかな、と思います。死というものがものすごく身近にあることをみんなが思い出すことで、変化が起きるかもしれない。
――死が身近であることと、動物であることを思い出すのは、どういう関係があるのですか。
村山 木が実をつけなくなると、根元を掘って根っこを切ってやります。すると、木が身の危険を感じて、根っこを伸ばし、実をつけるんです。そういうことが、人間にも起こりうるんじゃないかな。命の証しに一番近いことをしなければ、あるいは次の世代を残さなければ、という気持ちが、のほほんとしていた人間の頭の中にも生まれることはあり得ます。被災地で赤ちゃんが生まれたというニュースを日本中の人たちがかたずをのんで見守り、涙を流して喜ぶ。そういう気持ちは伝染するだろうし、次の命をつくらなくては、という気持ちになるのかもしれません。(つづく)
(2011年6月5日 読売新聞)
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