作家雨宮処凛さんインタビュー全文(1)キャラ変え、むりやり行動的になる
貧困問題に義憤を覚えて社会運動を起こし、一時は右翼団体に入会、北朝鮮訪問など過激な経歴でも知られる作家雨宮処凛さん(36)。だが実は、レジでお釣りを間違われても何も言えない「小心者」なのだという。そんな小心者でも生きやすくなるコツをまとめた「小心者的幸福論」(ポプラ社)を3月に出版した。(岩永直子)
| 雨宮処凛(あまみや・かりん) |
|---|
| 1975年、北海道生まれ。作家。著書『生きさせろ!難民化する若者たち』で2007年度日本ジャーナリスト会議賞受賞。反貧困ネットワーク副代表。 |
――小心者とは意外です。
雨宮 強い、積極的な人間だと勘違いされることが多くて逆にびっくりです。スーパーでおばさんにレジの列に割り込まれても文句が言えないし、声が大きい人や押しが強い人は無条件で怖い。自分から誰かを誘うなんて絶対できないし、道ばたで知り合いに会っても、「私が話しかけたら迷惑なんじゃないか」と思って、絶対自分から話しかけられません。自分から電話をかけることは100%できないし、メールも9割は自分から送ることができないですね。
「雨宮さんは行動的で、すごいですね」なんて言われると、「いや全然違うんです。無理してやってるんです」と答えています。
――小心者の心得の一つとして、「キャラ(※記者注 キャラクター、性格)を変え、むりやり行動的になる」とも書かれていますね。
雨宮 中学までひどいいじめに遭い、引っ込み思案で、自分の意見も主張できない日陰キャラでした。いじめがなくなった後も、いじめられっ子キャラをずっと引きずり、一生このままだと思うと、すごく辛かったんですね。辛いということは、本当は自分の意見もちゃんと言いたいし、人とコミュニケーションを取りたいし、もっと大胆になりたいという気持ちがあるわけです。
北海道に住んでいた高校生まではそういう地味キャラだったのですが、東京に出て、知り合いが一人もいないということですごく解放されました。ああこれで1からキャラを変えられる、変えようと思いました。
――具体的にはどう変えたんですか?
雨宮 今日から全部変える、というのもつらいので、最初は期間限定です。キャラ変え強化週間を作り、この間知ったイベントは全部行き、誘いはすべて断らないなど、自分と正反対キャラを演じていました。一定期間だけでも変えられたら何とかなるんじゃないかと思って。そういうふうにしていると、人の目って簡単に欺けるし、徐々に評価が変わっていくんですよね。新しい世界が開け、自分発見にもつながりました。
高校デビューとか、就職デビューとか、固定化された人間関係から脱した瞬間が、キャラ変えのチャンスだと思います。
――「できるだけ人に好かれないように生きる」というのも驚きの秘策ですね。
雨宮 あるイベントで、摂食障害の女性が「人に好かれようとしてばかりいると、自分と仲が悪くなる」と話すのを聞いて、ものすごく腑(ふ)に落ちたんです。「自分と仲が悪くなると生きづらくなり、人と仲が悪くなるよりも、自分と仲が悪くなるほうがやっかいなんだ」と。自分の気持ちにうそをつかないようにしたら、摂食障害とかリストカットが治ったと話すのを聞いて、とてもよくわかる気がしました。
人に好かれよう、空気を読めというメッセージがあふれている世の中で、皆が人の顔色をうかがい、自分をないがしろにし過ぎです。本当の自分を出せないことや素の自分を否定されることと、リストカットなどは絶対つながっていると思います。
――確かに、誰にでも好かれようと努力するのはきつそうです。
雨宮 仕事などをしていると、必ずうそをつかなくちゃいけない場面がたくさんあると思います。そのうえプライベートでもうそをついていたらもちません。私も人に嫌われないように努力してへとへとになっていた時期があって、今もそうなんですけれども、小心者って特にそうなりがちなんです。嫌われることを恐れてしまう。
でもそれでは疲れるので、むしろ嫌われようとしてみたら、すごく楽になった(笑)。頼りにされなかったり、あきらめられたり、まともな人に数えられなかったりする方が、すごく楽になりますよ。
――でもそうしていたら、嫌われるだけではなかったんですよね。
雨宮 自分にうそをつかずに生きると、少数でも好きになってくれる人がいるものです。万人にうっすら好かれるより、少数に濃厚に好かれた方が、困った時に頼りになりますよ。ほとんどの人に嫌われても生きていけますし、実害はないですから大丈夫です。(つづく)
(2011年4月28日 読売新聞)
こころ元気塾 最新記事 一覧はこちら
- [生殖心理カウンセラー]不妊治療で心のケア(2013年5月16日)

- 性的少数者の診療所・井戸田一朗医師(4)エイズの今(2013年5月12日)
- 性的少数者の診療所・井戸田一朗医師(3)ゲイであること大切に(2013年5月11日)
- 性的少数者の診療所・井戸田一朗医師(2)全国から患者が(2013年5月10日)
- 性的少数者の診療所・井戸田一朗医師(1)なぜ開設したか(2013年5月9日)
- 不安の聞き取り 医師の役割(2013年5月2日)
- 介護の悩み 分かち合い(2013年4月25日)
- ツイッターに詩 災害時の孤独埋める言葉(2013年4月18日)
- 嫌な面 前向きにとらえる(2013年4月11日)
- ノートルダム清心学園理事長・渡辺和子さん(5)人生の冬も機嫌よく(2013年4月2日)
