アティテューディナル・ヒーリング…「評価」やめて心の平和得る

 だれでもとらわれることがある恐怖や不安、怒り。そうした否定的な感情に長く引きずられず、早く「心の平和」を取り戻すための手法がある。米国で生まれた「アティテューディナル・ヒーリング(AH)」だ。(藤田勝)

考え方変え自ら「癒やし」

 AHの取り組みは1975年、米国で重い病を持つ子どもを支援する活動の中で生まれ、その後、あらゆる人を対象に世界に広まった。宗教でも精神療法でもなく、自分でできる「癒やし」の手法だ。

 日本にAHを導入したのは、元衆議院議員で精神科医の水島広子さん。2005年から06年に米国で研修を受け、同年10月にボランティアグループ「AHジャパン」を設立した。

 水島さんによると、AHでは、人の本質を「温かい心」と考える。不安や怒り、自責などの否定的な感情を「恐れ」ととらえ、これらの感情を手放す。そのために、「評価」も手放す。

 「人がムカムカしたり、生きづらかったりするのは、善悪を評価してしまうから。もちろん、仕事に評価は不可欠ですが、人格ではなく、その『行動』自体を客観的に評価すればいいのです」

 たとえば、仕事でノルマを達成できない時、「自分はなんてダメな人間なんだ」と“評価”しがちだ。しかしAHの考え方では、「達成できなかった」という現実だけを受け止めて、対応策を考えればよい。自分を責める必要はないのだ。

 AHの考え方は12の原則にまとめられており、一部を表に抜粋した。特に、「どんな人も、愛を差し伸べているか(支えようとしているか)、助けを求めているかのどちらか」という考え方は実用性が高い。

 相手を非難したり、不満を訴えたりする人は、〈困って助けを求めている人〉と考える。そう考えれば、自分が攻撃されても相手に温かい心で対応できる。

 AHの概要は本やDVDで学ぶこともできるが、その上でグループ活動に参加すると理解が深まる。

 グループ活動では、AHの原則に従い、人の話を評価せずに聞く。助言も禁止だ。研修を積んだ世話人が進行役になり、参加者は人間関係や仕事の悩みなど打ち明け、互いに耳を傾ける。評価の恐れがなく、秘密厳守のため、話し手は安心して気持ちをさらけ出せる。

 水島さんに共鳴し、各地にAHグループができている。AHジャパンのホームページから身近なグループを探せる。

 AH大阪代表の谷裕子さん(41)は、子ども時代の性的被害に加え、結婚後はDV(家庭内暴力)に苦しんでいた。そんな時、AH創始者の本を読んで人生が変わった。「どんなにつらい体験があっても、健康的な生き方を自分で選ぶことはできる、と気づいた」と言う。その後、水島さん同様、米国でAHを学んだ。

 水島さんは「AHは医療ではない。でも、うつ病になりかけて、自分で次々と『恐れ』を生み出してしまうような時に、それを手放していくのにとても効果がある」と話している。

アティテューディナル・ヒーリング(attitudinal healing)
 あえて日本語にすれば「心の姿勢を自ら選ぶことによる癒やし」。略してAH(エイ・エイチ)と呼ばれることが多い。水島さんの主な著書に「(おそ)れを手放す」(星和書店)や、その続編がある。

2011年3月3日 読売新聞)

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