日野原重明の100歳からの人生
2011年1月26日
健康診断と定期検診、人間ドックとは 
健康診断… 児童の発育検査が始まり
健康診断という言葉は、日本では戦前から小学校の児童の身長、体重、視力、聴力、虫歯、胸郭や脊柱異常の有無、聴診器で心雑音や呼吸雑音の有無を医師が聴診することが、その内容とされてきました。
これは小学校児童の発育や健康状態を医師が調べることを文部省が指定したからです。
ところが、日本では肺結核が戦前、戦後に多発して、結核予防法が1951年(昭和26年)に施行されるようになり、ツベルクリン反応や胸部X線撮影による検査が求められるようになりました。
以上は、学童や中学・高校、大学生に行われてきましたが、これらは広い意味で健康診断と言われるものです。
人間ドック… 社会人への精密身体検査が始まり
さらには、はっきりした病気がなく、普通の社会生活をしている社会人を対象に、1954年(昭和29年)から、国立第一病院と私の勤務する聖路加国際病院が中心となり、東京の他の病院も含めて、1週間入院させて、血液、尿、便の検査の他、肝、腎機能、心電図、胸部X線、胆、胃X線撮影を含めた検査と診察を行い、それに短期入院精密身体検査の名称がつけられました。これを当時の新聞記者が俗称「人間ドック」と呼ぶようになり、この名称がはやり、最初の短期入院精密身体検査の呼び名は消えてしまいました。
その5年後の1959年(昭和34年)、被検者を入院させず、外来で分割して検査がなされ、これが外来人間ドックとも呼ばれました。
アメリカのカリフォルニア州オークランド市のカイザー財団で、短時間に血液や尿の成分を分析して結果を出すオートアナライザーが開発され、さらにコンピューターの出現で、診察や検査の結果を即日に行えるようになり、この1日健診は日本でも1970年から全国に普及することになりました。
定期検診… 従業員の健康状態検査が始まり
もともと、健康と思える一般人や会社の従業員の健康状態を定期的に調べることは、150年前に英国のドーベル氏が行い、アメリカ合衆国にもこれが企業中心に広がるようになりました。これは今日いう定期検診の始まりです。
日本でも自働化健診システム研究会という組織が1973年に起こり、東大の樫田良精博士を会長にして企画されましたが、1985年には、その呼び名は「日本総合健診医学会」と改称され、樫田会長の死後は、私日野原が第2代会長となり、今日に至っています。
日本総合健診医学会と日本人間ドック学会とは、検査の内容はほぼ同様です。健診には国際学会があり、アメリカのハワイを中心に1971年に発足した国際健康評価と健康増進学会 ( International Health Evaluation and Promotion ) の名で、太平洋アジア地区、アメリカ地区、欧州地区に分かれ、隔年毎に以上3地区のいずれかで学会が行われ、2011年2月にはハワイで開催される予定です。
最初は健康診断という単純な呼び名でスタートされたものが、健康評価の項目は次第に数を増すと共に精密度を加え、今ではX線撮影の他に超音波や内視鏡検査も加えられ、前立腺のがん診断のPSA検査までが行われるようになったのです。
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- プロフィール
- 日野原重明(ひのはら・しげあき)
- 誕生日:
- 1911年10月4日
- 聖路加国際病院理事長
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コメント
大学で診療する医師です。
かねてから「人間ドック」という呼び名に違和感を持っていました。1つは、船や自動車のように悪いところを見つけて修理するようなイメージから。
もうひとつは、健康診断(こちらも違和感がありますが)では、日ごろの生活のしかたを振り返る良い機会になり、医療従事者から個々人の事情を踏まえたアドバイスをいただき、さらにそれについて、やりとりができるところに意義があると思うのですが、その点が表現されていないことから。
後者は自動化健診でさらに顕著です。
さらに、地域や職域の集団健診では、その集団の持つリスクを評価し、取り除く住民~社会運動に持っている可能性がありますが、ドックは極めて個人的なものに留まり、受診者への還元の意識が希薄です。
良い呼び名がないのですが、「人間ドック」という名まえはもうやめませんか。
当初の原稿で、年代の表記に誤りがありました。お詫びして、訂正いたします。ご指摘くださった方もいらっしゃいました。ありがとうございました。本文は修正済みです。
何にでも歴史があるのは当たり前のことですが、健康診断の歴史を振り返る恩恵にあずかりました。
先人のご苦労に感謝いたします。