大腸がん治療の最前線

[パネルディスカッション](2)血便と便通異常あったら病院へ

 田中:仮に症状があった場合に、これは気を付けて病院に行ったほうがいいという、注意すべき症状を教えていただけますか。

 山口:血便と便通異常ですね。特に、血便は、がんが見つかる頻度が高いです。実際に、血便以外で最近、便通が変わったということで、検査してもなかなかがんは見つからないですが、がんの患者さんに最初に何に気付きましたか、体の変化の何を気付きましたかというと、便通の頻度が変わったとか、便の形が変わったとおっしゃる方が結構多いので、ここは注意されたほうがいいかと思います。

 田中:そういうときは放っておかないで、病院で診てもらったほうがいいということですね。分かりました。

 次に、実際に大腸がんが見つかった場合のことを考えてみたいと思いますが、治療の基本はどういうことですか。やはり手術ということになるでしょうか。

取りきれるものは手術が基本

 山口:取りきれるものは、手術するというのが基本のスタンスです。というのは、抗がん剤だけではあくまでも延命治療ですので、手術で取りきるのが最初の方法論で、それが内視鏡であれ、おなかを開く方法であれ、まず取りきることを考える。それができないときに、抗がん剤治療を考えるというステップになります。

 内視鏡での治療については、大腸がん治療ガイドラインというものがありまして、過去のデータの蓄積から、内視鏡でまず取ってみて、例えば、がん細胞が粘膜の表面から約1ミリを超えて入り込んでるようなやつは、リンパ節転移の頻度が数パーセントあるので、安全のために手術しましょうとか、そういう明確なガイドラインがございますので、そちらを参照してもらったほうがいいかと思います。

 田中:分かりました。内視鏡で治療できるかどうかは、がんがどれだけ深く進んでいるかということで判断するということですね。

抗がん剤治療が必要なケースは?

 田中:次に、抗がん剤についてお話しいただこうと思います。抗がん剤治療が必要になる場合、あるいは抗がん剤治療をする場合はどのようなケースになるのでしょうか。

 山口:まず、一つは手術で取りきれた場合の抗がん剤治療の術後補助化学療法と、先ほどメーンでお話しさせていただいた転移性、手術で取りきれない方の抗がん剤治療の2通りの考え方がございます。

 特に、ステージ3で取りきれた方に対しては積極的な補助化学療法で、抗がん剤をやることによって再発のリスクが下がることをねらって、原則としては半年間、抗がん剤を受けるというのが世界的なスタンダードになっています。

 転移性、手術で取りきれない方に関しましては、効いている限り気長に抗がん剤を続けて、延命を確保していくことが基本のスタンスです。

 田中:今のお話を要約しますと、まず手術で治る率を上げるために使う抗がん剤があるのと、手術ができないような場合に、つまり再発や転移してしまった場合に、延命効果をねらって抗がん剤を使うと、その2通りがあるということですね。分かりました。

 再発や転移について、がんのご経験のある方に伺いたいのですけれど、治療している間に再発とか転移の不安は感じられましたか。黒澤さん、いかがですか。

 黒澤:僕の場合は、外科の先生が、取りあえずリンパ節への転移があるかどうか調べたいと言うので、ずいぶん調べてもらいましたが、一つも転移はなかったという結果をいただき、安心しました。それ以来は、頭から一切がんのことはどこかにいっちゃいました。

 田中:原元さんはいかがですか。そういう不安というのは、やはりありましたか。

「再発」という言葉におびえる

 原元:わたしの場合は、最初のポリープを取って半年後にもう一回検査をしたら、ちょっとまれなケースだそうですけれども、また同じ場所に、ポリープが再生していたのです。それで、先生もちょっとびっくりして、「めずらしいね」と言って、少し大きめに、えぐるように内視鏡で切ってくださったらしいのです。

 それを聞いたときに「これがもしかして再発ということかな」というふうに、ものすごく心配になってしまって、「一応、これをまた病理検査に回しますね」と言われ、1週間、結果を待つまで眠れませんでした。本当にあんなに怖かったことはないですね。

 結果的には大丈夫でしたが、最初のがんを告知されてから半年ちょっとは、再発という言葉にすごくおびえていました。(続く)

2010年12月20日 読売新聞)

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