医療部発
2010年7月14日
よその家で「こわい」?

7月6日~13日の医療ルネサンスで、適切な治療やケアで認知症(のような症状)が治ったり、改善したりした事例を紹介する「あきらめない認知症」(全5回)を担当しました。本人や家族、医療、施設関係者など、多くの方々にご協力いただき、改めてお礼申し上げます。
さて、連載の2回目で、脳内に血の塊ができる「慢性硬膜下血腫」で認知症のような症状が出た千葉市内の女性を取り上げました。自分の家にいるのに「よその家で世話になっている」と言う場面がありますが、取材に対応してくださった女性の長女によると、『こわい』と漏らすこともあったそうです。
その時は「知らない家にいると思い込んでいたら不安も大きいだろうな」と納得したのですが、その後も会話の中で、長女の口から「こわい」という言葉が度々出てきます。それも、どう考えても恐怖とは無縁の場面で。「どうして怖いのでしょうか」と尋ねました。
すると女性の長女は笑いながら「ごめんなさい。この辺りでは『こわい』というのは『疲れた』という意味ですよ」と。
それで疑問が氷解しました。血腫の影響で体がだるかった、というわけですね。最初の「こわい」は、たまたま「怖い」でも意味が通じたから誤解したのです。関西で生まれ育った私には縁のなかった千葉の方言に触れ、新鮮な思いがしました。方言はいいものですよね。
夕方、デイサービスから帰ってきたご本人にも話を聞きました。手術後は「こわい」と感じることもなくなったそうで、「命拾いした」と喜んでいました。長女も「長生きしたら困るわ」と言いながらもうれしそうでした。
「治らない」とあきらめられがちな認知症ですが、このシリーズを読んで、治ったり、症状が改善したりする人がいれば、とてもうれしく思います。
竹内芳朗 2010年5月に大阪科学部から医療情報部へ。主な取材対象は認知症、がんなど。人生初の首都圏での在住に気持ちが浮かれている。好物の「関東風だし」のうどん・そばを連日食べている
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- プロフィール
- 読売新聞東京本社編集局
- 医療部
- 1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。
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コメント
「リバージョン率」という指標があります。
あまり聞き慣れない言葉だと思いますので、少々説明致します。
アルツハイマー病は、早期診断の重要性が指摘されております。
健忘型の軽度認知障害(amnestic MCI)は、「超」早期アルツハイマー病とも捉えられていますが、一概に進行性に悪化する状態とは限らないことが分かってきており、いったんは「軽度認知障害」と診断されても後日の評価で知的に「正常」と判定されることがあり、これをリバージョンと言います。
リバージョン率は、報告によってバラツキがありますが、14~44%と意外に多いことが報告されております。
PETなど診断技術の発達とともに、アルツハイマー病が「超早期」に診断されるケースは多くなっていくと思われますが、必ずしも100%進行性に悪化するわけではないということを、この「リバージョン率」という数字は物語っています。
ただし、アルツハイマー病は、「進行性疾患」であることが診断のための1つの基準になっていますので、その辺りを混同されないようにして下さい。
(日本認知症学会専門医)