がんと私 本田麻由美記者ブログ

2010年7月9日

「働く」ことの意味―― がん患者として (上)

 毎日、ジメジメとうっとおしい季節ですね。

 取材で外回りをしていると、全身ベタベタになるだけでなく、ショートの髪の毛がプールからあがってきたみたいにビショ濡れになってしまうことも、たびたびです。

 ずっと続けている乳がんのホルモン治療には、“ホットフラッシュ”という副作用があり、突然、カーっと熱くなって大量の汗をかくことがあります。私の場合、最近は少なくなっていたのですが、暑い季節になると症状が現れることがあり、時折、周囲の目を気にしながら恥ずかしい思いをしています。

 さて、久しぶりの投稿となってしまいました。この2週間、何をしていたかというと、日々の取材の合間に、「日本乳癌学会」と札幌在住のがん患者さんの取材で札幌出張に行ったり、幾つかの医療関係の委員会やシンポジウム等で発言の機会をいただいたので、その準備に追われたり……でした。その一端をご紹介すると――

 今月5日には「東京大学メディカルキューブシンポジウム~社会に開かれたトランスレーショナルリサーチの推進を目指して」(http://tri.u-tokyo.ac.jp/jp/index.html)に参加しました。ここでは、新薬などにつながる新技術の最近の開発例と、患者に届くまでに必要な臨床試験や承認審査の体制に関して、日本が抱える様々な課題の報告や提言がなされ、大変興味深いものでした。私自身は、新治療法開発への患者としての期待、一方で患者・国民の視点なしに研究者の論理で臨床研究が推進されることへの不安などを、事例を紹介しつつ発言させてもらいました。

 また、同7日は、順天堂大学を中心に5大学で取り組んでいる「がんプロフェッショナル養成プラン」の外部評価委員会(私も委員の1人)でした。

 この「がんプロ」は、患者たちが求めた「がん医療を担う専門医や専門スタッフの養成」を進めるため、がん対策基本法に基づいて文科省が進めている事業で、全国94の医療系大学が参加して18チームができています(☆図参照)。今年2月の文科省の調査では、全体で、がんの専門医422人(放射線治療専門医49人、薬物療法専門医161人等)、がんを専門とする医療スタッフ298人(がん専門看護師110人、がん専門薬剤師82人等)の養成が進んでいるといいます。

 順天堂大チームの報告の中では、チームで専門的ながん医療を進めていくことをどう教えるか、開業医や地域の病院の医療スタッフともいかに連携するかについて、合宿や拡大キャンサーボードなどの工夫をされている点が印象的でした。中でも、熱心に取り組んでおられる医師の「若手を教えながらも自分たちが学んでいることに気付けるのです」という言葉とその姿勢に、1人の患者として勇気と希望をもらえた気持ちになりました。

 これらの会合で学んだことは取材を加えて新聞紙面等で紹介していきたいと考えていますが、参加して何より強く感じるのは「仕事ができる喜び」です。がん患者であり取材者である立場から発言や問題提起の機会をいただいたり、それを基に取材をさらに深めることができるという、「社会とつながり、何かの役にたてると感じられる喜び」と言い換えることができるかもしれません。

 以前、清水哲郎・東大特任教授の「臨床死生学と臨床倫理学」と題した講演を聞いた際、「人の尊厳」について「自らに価値があると感じること」「現在の自分の生を肯定できるというあり方」と説明されていました。

 すると、私が抱いた「社会とつながり、何かの役にたてると感じられる喜び」は、がんを患い(物理的に、精神的に)できないことが増えたとはいえ、人としての尊厳が保たれている状況だと言えるのでしょう。2008年の統計によると、がん経験者の4割強が65歳未満の現役世代だということですから、私のように「働くこと」が人間としての尊厳を保つことにつながっているという患者さんも少なくないはずです。<続く>

コメント

社会と繋がることは大きいです
[ダイエット中]2010年7月10日

本田さんは職場にはとても恵まれているなぁとずっと思っていました。
もちろん大変な苦労をされてきたし、職場で認められるだけのお仕事をされているからこそなのですが。

私は保育の仕事をしていましたが、昨年はあきらめました。いろいろな条件がそうさせたのですが、仕事がなくなって、社会と繋がっていないことがとても辛かったです。おまけにこれから治療費用がかかるというのに仕事を辞めるというのは我が家の経済にはとてもきついことでした。また、「あきらめた」という思いが強かったので気持ちも落ち込みました。

治療が一段落してから保育園でパートの仕事があり、無事に復帰できました。本当に嬉しかったです。週に三日ですが自分の体力や他のやりたいことを考えるとちょうどいいように思います。
再び自分が保育に少しでもかかわれること、仕事ができること、働いてお給料がもらえること、全てのことが本当に嬉しくてわくわくしています。

患者は孤立しがちです。家庭でも。全てをわかってもらうことはできません。
社会の中で自分がいる場所があるということ、少しでもお金を稼いでいけること、これは本当に気持ちの中でも大きなものがありますね。


がんプロにも本田さんは関わっていらっしゃるのですね。いろいろとやり過ぎてはいませんか?まずご自分の体調を優先させてくださいね。

以前神奈川のがんプロの市民公開講座に参加しましたが、あくまでも医療者側のものという感覚でしかなくてがっかりしました。患者のはいる隙がなかったのです。もちろん医療者育成のためのものなのですが、患者不在で進められていう感があり残念に思っています。

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