鎌田實の見放さない・ブログ

2010年3月31日

カロリー制限か、糖質制限か

 
博多で食べた水炊きは、鶏のつみれと野菜がたっぷり。柚子胡椒でいただくスープも、満腹感を味わえる。〆のうどんやごはんを控えれば、糖質制限食になる。

 先週、社内を歩く社長の話を書いた。ウォーキングが自分の健康のためだけでなく、社員とコミュニケーションをとるために役立ったことで、ウォーキングを習慣にすることができた。

 糖尿病では、運動療法とともに食事療法のすすめ方が重要になる。食事療法も、その人の生活スタイルに合い、続けられる方法をアドバイスすることが重要になる。

 社長には3人の息子がいた。長男と三男が糖尿病であった。

 三男は、重い糖尿病だった。糖尿病の教育入院を何度もして、病気や治療についての意識付けを行った。栄養士が計算して作ったカロリー制限食を実際に食べてもらいながら、食事療法について理解してもらうよう、丁寧に指導した。三男は意志も強く、カロリー計算の仕方もすぐに理解したが、半年も続かなかった。

 三男は、父親の会社で営業を担当していた。接待のために飲む機会も多かった。本人も酒が好きで強かった。カロリー制限をしなければならないことは、本人もよくわかっていたが、結局、仕事上、カロリーをコントロールすることができなかったのだ。

 このときに患者さんを責め、カロリー制限するようにさらに努力させても、結局は長続きしないことが多い。できるだけ本人に負担のない形で、受け入れやすい方法を考えることが重要だと思う。

 ぼくは、彼に糖質制限食をすすめた。糖質つまりパンやご飯など、炭水化物を制限する方法である。この方法は、すべての糖尿病患者に有効というわけではない。ただし、カロリー制限食がうまくいかない人の場合、試してみるのもいいと、ぼくは思っている。

 ちなみにぼくも、糖質を少し制限する方法で効果を実感している。ぼく自身は糖尿病ではないが、幼いころに生き別れた実の父が重い糖尿病だったと聞いている。糖尿病の遺伝子をもつ可能性が高いので、発病しないように、食事と運動には注意してきた。

 アメリカ、ヨーロッパでも低炭水化物ダイエットが推奨されはじめている。肥満予防だけでなく、糖尿病にも効果があることがわかってきた。

 糖質制限食では、日本酒やワインはいけないが、焼酎やウォッカなどの蒸留酒は制限の対象ではない。肉や魚は食べてもいい。フランス料理のフルコースも、パンやごはんに手をつけず、スイーツを残せば、ほぼOKだ。

 この方法は、接待でお酒や食事をとることが多い三男にはぴったりはまった。酒の席でも、酒の種類を選べば飲むことができる。食事も、糖質さえ気をつければ、おいしいものを我慢せずにすむのだ。

 この方法で、糖尿病のコントロールが一気にうまく進んだ。

 しかし、東京の人間ドックで、ドック医から糖尿病の糖質制限食は、学会では認められていない、危険だと言われ、動揺した。その結果、カロリー制限食か、糖質制限食か、迷い、どっちつかずになった。いちばんよくないのは、糖質制限食の「フランス料理のフルコースでもOK」というところだけが頭に残り、しっかりパンやライスを食べた。糖質制限にもならず、しかもカロリーもオーバーしてしまったのである。

 こういう人はけっこういる。みんな「食べたい、飲みたい」という誘惑に負けて、都合よく理論を解釈し、元の生活に戻ってしまう。

 三男も、一度はよくなった糖尿病が、急激に悪化してしまった。もう一度、基本的な理論を理解してもらう必要があると思った。

 諏訪中央病院では、患者さんや一般の人を対象に、講師を呼んで健康について話してもらう「ほろ酔い勉強会」を開いている。もともと諏訪中央病院にある東洋医学センターの、漢方を専門とする長坂医師が糖質制限食を取り入れていたが、外部講師を呼ぶことにした。外部の人の話を聞くと行動変容が起こることがある。これは意外に大事なヒントだ。高雄病院理事長の江部康二先生に講師をお願いした。

 基本的な理論に立ち返り、我流を捨てることで、三男の糖尿病は再びうまくコントロールできるようになった。あれから2年経つが、三男は糖質制限によって、糖尿病をうまくコントロールしている。

 どんなにすばらしい理論も、続けられなければ意味がない。その人に合った方法を発見してはじめて「行動変容」は成功する。

 コメントありがとうございます。

 [イニュニック]さん、ぼくの本がお役に立ってうれしいです。大学進学、おめでとうございます。いっぱい勉強してください。ぼくへの便りは、諏訪中央病院宛てに送っていただければ、必ず読みます。返事はできるだけしたいと思いますが、100%ではありません。ごめんなさい。

 [看護師志望改め歯科衛生士志望]さん、受験に失敗したとのこと、残念ですね。でも、一時間で人生が変わったというのも、なかなかおもしろいような気がします。へこたれず、ジタバタせず、がんばりすぎず、あきらめないで続けてください。健闘を祈ります。

 ◆坪田一男医師のブログでも糖尿病予防について取り上げています。こちらもご参考に。

コメント

鎌田先生へ
[りす]2010年4月1日

以前、書き込みさせて頂いた りす と申します。
りす地方の桜は、ほぼ満開になり、今日の風雨にひとひら、ふたひら散っています。

今日は、先生に御報告です。
3月から、医療事務の仕事に就きました。

8年前に、医療過誤の手術をして日常の生活には、制限がありますが前向きに生きて行きたいと思っています。
少し前に、造影検査だったのですが、その時の看護師さんが、手術した時の看護師さんで、目を潤ませて、大きい手術だったから覚えていると言われて、私も涙がこぼれそうでした。

看護師さんの気持ちを忘れず、病気の方の心に少しでも寄り添えるような受付になりたいと思います。
鎌田先生の本に励まされています。
ありがとうございます。

お応え…
[イニュニック]2010年3月31日

ありがとうございます。

嬉しすぎて大興奮しています。読んでいただけると思うととても嬉しいです。お祝いの言葉まで頂けて感激です。

では宛先を諏訪中央病院にして、近いうちに必ずお手紙をしたためます。

頑張ります。
本当にありがとうございました。

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