(23)きれいごとだけでは済まない
自宅で家族と暮らしているタメさん(仮名)は認知症で、自分がはいている紙オムツに手を伸ばし、一部をひきちぎって食べてしまいます。ぬれていて気持ち悪いからなのでしょうが、家族はずっと見張っているわけにもいかず、ほとほと困り果てています。
そこで、タメさんがオムツの中に手を入れられないように、「上下がつなぎで、ジッパーが後ろについた服」を着せています。こうした服は「抑制服」と呼ばれ、介護施設では人権の観点から着せないようになっています。
認知症になっても「自分の意思を行動に移す」能力は失われません。本人の意思や行動を尊重したいのはやまやまですが、その内容が適切でない場合、支える側にも様々な苦労や困難を生み出します。
タメさんの家族は専門職の知恵を借り、排尿の間隔を調べてトイレに誘うなどオムツに頼らない方策を模索し、抑制服をやめようと頑張っています。ですが、「これなら大丈夫!」という良い結果はまだ得られていません。
認知症の介護は、きれいごとだけでは済まない難しさがあるのは事実です。「してはいけないこと」「当面、そうするしかほかに手がないこと」と、「本来こうありたいこと」との間に折り合いをつけ、日常生活を支えていく心構えも家族には必要なのです。(和田行男、介護福祉士)
(2010年3月9日 読売新聞)
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