キレイの近況
2010年2月1日
ガンバ、理想の文体

早稲田大学の同窓会誌から依頼があって巻頭エッセーを書きました。
38年かけて、やっと文体ができたと感無量。遅い。ずいぶん時間がかかってます。
文章については、17歳の時から、コンプレックスに思っていました。それまでは作文の上手なクミちゃんだったんだけどね。
高校生の時は、文芸部長で、営業は上手かった。文章は太宰かぶれ。部員は誉めてくれたけど、なんとなくヤバいと感じてた。
カラオケで矢沢永吉唄って拍手が来るのと本当の永ちゃんは大きく違う。コンプレックス相まって嘆美的な世界を書く作家は好きじゃなくなった。谷崎潤一郎とか三島由紀夫とか。逆にヘミングウェーにあこがれた。いつかヘミングウェーみたいな文章が書きたいと思い続けてきた。
大学院で、文章表現のクラスを受講した。マスコミ出身の新聞に紀行文も執筆されている先生が、「君の文章は、迷走する。何が言いたいのかわからない。平明を心がけなさい」と平明におっしゃられたことが胸に響いた。
これだ。ヘミングウェーだ。シンプルでいて、そこに真実の強さと事実の重みが表現されれば、最高だ。文章が踊らず、内容が踊ること。
まだまだだけどいつかそんな文章が書きたいと挑んだ新しい文体、やっぱりまだまだ?
西北の風に吹かれて
秋吉久美子
2007年9月、政治経済学術院公共経営研究科、2年制コースの1年生として入学。政治家になるつもりか、とよく尋ねられたが、違う。公共経営に文化人類学的哲学が見いだされる、と臨んだ。研究予定は「個の概念について」だった。早稲田大学創立125周年に華やぐキャンパスに聳える大隈タワーの12階で、私は最初の科目ガイダンスを受けた。教授は次々に個々のキャリアと専門分野を質問する。学生は簡潔に、経歴や、目的、専門について答える、いよいよ私の番だ。「30年以上、エンターテインメント業界に従事して参りました。専門分野はセクシー系です。」……誰も笑わなかった。
そんな風にして私の学生生活は始まった。仕事と両立させるため、曜日を決めて2限から7限まで強引に授業を詰め込んだ。さすがに1日90分×5はきつく、6限、7限ともなると、グッタリして眠くなるので、自分に厳しく席を前方に取る。朝方ロケが終わって、寝ずに学校に行ったこともある。苦ではなかった。新しい知のシャワーを浴びるのはすがすがしい。本や資料やノートでパンパンに膨らんだ重たいバッグを肩にくい込ませて、通用階段を上り下りしながら教室を渡り歩く。あわや舞台の初日がレポートの締め切りラッシュと重なったこともある。コメディーの台詞を覚えながら行政用語に四苦八苦して、地方分権の問題点に関するレポートを仕上げた。
2008年夏、大隈地域創成講座に参加。地域をリサーチし、その可能性を求め、4、5人の小隊に別れてプレゼンテーションを競う。最大公約数的な提言から実現可能な理想に突き進む。暑い暑い佐賀、唐津で夜は酒を酌み交わし、最後は徹夜の追い込み。皆、目が血走った。
地方分権が進みつつある日本にあって、明治以来の改革を支える公共経営は、今こそ最も必要とされるトレンディーな学科だ。
仲間、理想、情熱、理論を与えてくれた大学院での日々。2年間吹き続けた西北の風は、今も私の胸を澄み渡らせてくれる。
「早稲田学報」(2010年2月号より)
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- プロフィール
- 秋吉久美子 あきよしくみこ
- 性別:
- 女性
- 誕生日:
- 7月29日
- 出身地:
- 静岡県
- 職業:女優
- 1974年、映画「赤ちょうちん」でデビュー。「異人たちの夏」(1988年)「深い河」(1995年)「青の炎」(2003年)など数多くの映画やテレビドラマに出演。2009年9月、早稲田大学大学院公共経営研究科卒業。
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コメント
小生、文芸部長時代の秋吉さんにお会いした(見た)ことありますよ。
隣の男子高のひやかし文学部員(高1の数か月間)だった頃だと思います。
文芸集を読んで、地方都市の女子高生がこんなこと書くのかと驚いた記憶があります。でも、どういう内容だったかは忘れてしまいました。それよりも、どんな美少女だったか覚えていたかったです。まぁ、こちらは田舎のむくつけき男子高生で、女性の容姿をまじまじと観察するなんて度胸はありませんでしたから(笑)。
時は巡って、早稲田学報の巻頭エッセーも偶然読む機会がありました。良い文章だと思いました。政治的思考って大事ですよね。社会の在り方とか制度を決めるのはやはり政治ですからね。
いつまでも美熟女、美熟々女でいてください。