(19)意思を尊重する姿勢
デイサービスに通っているゴンさん(仮名)は、なぜ自分がここにいるのかがわからなくなり、たびたび、「こんなところにいる必要はない。帰らせろ」と言います。
職員が「毎回同じ説明をする」「適当にごまかす」といった対応をしていたため、「若いヤツにあしらわれている」という思いが募ったのでしょう、ゴンさんは激しく怒り出すようになりました。
そこで「帰らせろ」と言われたら、その意思を尊重して行動するようにしてみました。
「ゴンさん、車で送ります。家までの道順はわかりますか」と尋ねると、「当たり前だ」と言います。「ではよろしくお願いします」と言って、主導権をゴンさんに握ってもらいます。
交差点に来ると必ず停車して、「ゴンさん、どっちですか」と聞きながら車を進めます。しかし、いくら走ってもたどり着けず、強気だったゴンさんも「おかしいな」と不安顔になってきました。
職員はそのタイミングを見計らって、「知り合いの所で一休みして地図を借りましょう」と助け舟を出すと、「おー」と快く応じます。これを何度か繰り返すうち、怒り出すことはなくなりました。
意思を尊重する姿勢が、変化を生んだのです。意思を阻害されたり、無視されたりすると怒り出すのは、人間として当たり前のことなのです。(和田行男、介護福祉士)
(2010年1月12日 読売新聞)
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