(15)タンスから大量のかばんが…
一人暮らしのミツさん(仮名)を外食に誘おうと、息子さんが家の外で待っていました。ところが、なかなか出てきません。
「どうしたのかな」と思って中に入ると、ミツさんが「かばんがない」とウロウロ歩き回っていました。息子さんも一緒に探すと、タンスや押し入れの奥から、かばんがたくさん出てきました。
「かばんは大事なもの」と、タンスや押し入れにしまい込み、そこにしまったことじたいを忘れていたのです。そして出かける時に「ない」と思い、また買うということを繰り返していました。これらは後でわかったことです。
息子さんは認知症の話を聞いたことがありました。「もしかして」と考え、思い切ってミツさんを受診させました。診断結果は初期のアルツハイマー型認知症でした。
流し台の収納場所に何本も同じしょうゆが置いてある、トイレの壁に便が付いている、洗濯機に汚れた下着が何枚も入れっぱなしにしてある、同じ人に何度も電話をかけた発信歴がある――など。
「目につかないところにこそ、その人の脳の状態を物語る情報がある」。そう心得ておくと、ミツさんのように、認知症の早期発見・診断につながります。状態を悪化させない方策も早期に立てられるのです。(和田行男、介護福祉士)
(2009年11月10日 読売新聞)
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